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トリックアートとしての羽衣狐さま、トリックアートを超える羽衣狐さま

ぬらりひょんの孫』9巻を買いました。

ぬらりひょんの孫  9 (ジャンプコミックス)

ぬらりひょんの孫 9 (ジャンプコミックス)


思い返せば椎橋先生の画は初期からかすれを出す墨絵的表現が評価されてきました。


(こんなの)

かわいいキャラクターによる日常を基本にして、バトル時にはこの絵でカッコよさを描く。

それが『ぬらりひょんの孫』でした。

ところがこの漫画に流星のようにやって来た羽衣狐さまは違いました。

羽衣狐さまはこの墨絵を使わず完全な白黒のベタ塗りで描かれ、そして周りとの表現の違いが浮彫のように格の違いとして出た。

ここまでは言及してきたところ。


ところが、単行本9巻ではその羽衣狐さまに墨絵表現も入れた絵が描き下ろされました。

羽衣狐表現の弱点として髪の質感が出せないことがありました。

完全なベタ塗りに徹することで髪の一本一本の細かな表現や光の当たり具合が出せない。つまりリアルな髪の表現としては不向きであったと言えます。
ところが見てください。この一枚絵では髪にもかすれを入れることで髪の一本一本の流れを感じさせる。

全体的なバランスをみても抜群で、今まで見た羽衣狐さまの中でも最もすばらしい画と思います。
額に入れて飾りたい。


私が特にすごいと感じたのは、この絵の背景です。

前述したように墨絵によるオーラの表現はこの漫画よく出てきて、それだけでは他のコマと違いはないのですが、これにはもう一つ面白い仕掛けがあります。

「だまし絵」をご存知でしょうか?見方によって2通りに見えてしまう絵のことです。

上の「老婆と婦人」やエッシャーの城の絵が有名で、トリックアートとも呼ばれています。

この羽衣狐さまは作者が意識したかどうかはともかくトリックアート的な面白さも兼ねています。

背景絵がオーラを表す墨絵か、羽衣狐さまの尾か、二通りの解釈ができるということです。

さらに面白いことに、後ろに描かれているものをオーラと見るか尾と見るかでこの絵が「おまけページの一枚絵」か「新たに追加された1ペ−ジのコマ(収録位置的にこれがコマと見てもおかしくはない)」かに判断が分かれる可能性があります。

後ろをオーラと見ればこれは見えない空気までも描いてしまう漫画のコマであり、尾と見れば単に尾を筆書きした一枚絵である。

単純に一つの絵としての完成度で究極なのに、トリックアート的な表現と掲載位置がこの絵を二重に面白いものにしている。

偶然の産物かもしれませんがこれが非常にすばらしい絵であることと、この絵が420円で見ることができることは確かな事実です。まわりまわった販促レビュー。