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カラーでもモノクロな羽衣狐さまの不思議


羽衣狐さまカラー再来!!

いやぁ、この羽衣狐さまは実にキュートですね。基本的に羽衣狐さまには「美しい」とか「妖艶」とかいう言葉が似合うのに今週のカラーはそれより「かわいい」が合う。ポップでキュートな羽衣狐さま。制服のリボンはグレーになりました。表情とポーズだけで(背景も助けてるけど)こうも印象が違うんだから椎橋先生すごいや。


画像右上には「月夜には 悪い奴らが 良く似合う!」って書いてあるんですが、これも「ワルい奴ら」でいいんじゃないかと思うくらいお茶目な京妖怪ズ。かーわいい。まぁ本編ではこいつらに主人公がボコられてるんですがね!

それにしてもこの羽衣狐さま、ノリノリである。これが本当の悪ノリってやつか。



では急にカラーがきたところで、今回はフルカラーでもモノクロな羽衣狐さまについて考えてみたいと思います。

以前いずみのさんが『バクマン』の福田さんに対し、「5巻のカラー表紙でも真っ白という徹底ぶりは、まるでカラーイラストでも徹底してモノクロな羽衣狐様のようだ」と言っていました(バクマンが面白いです - ピアノ・ファイア

私は羽衣狐さまは白黒表現が当然と言う認識だったため、この視点は逆に新鮮でした。

「なぜ羽衣狐さまはカラーでもモノクロか?」これについて最近読んだ本にヒントがあったので紹介したいと思います。


遠野物語へようこそ (ちくまプリマー新書)

遠野物語へようこそ (ちくまプリマー新書)


遠野物語』の入門書で、読みやすく面白いです。『遠野物語』は未読でして、遠野妖怪の出てくる『ぬらりひょんの孫』において『遠野物語』の知識があった方が良いのではないかと思っていたところちょうど新書が出てたので購入した次第。

この中で『遠野物語』の第三話の部分を引用します。

あるとき、若き猟師は狩りをして山奥へと入っていきます。そして、はるかな岩のうえで、ひとりの美しい女が、長い黒髪をくしけずっているのに遭遇するのです。顔の色はきわめて白い。この若者は豪胆にして恐れを知らず、すぐに銃を女に差し向け、打ち放すと、女は弾に応じて倒れた、というのです。
(第二章 山からの呼び声)


お話はこのあとも続くのですが、必要なのはここまで。とりあえずここまでで「なぜ猟師はすぐに女を撃ったのか」という疑問が生まれます。見た目は人間の女で妖怪らしい動きも見せていないのに、なぜ?この点について著者はこう語ります。

それでは、なぜ猟師は「直に」女を撃ったのでしょうか?説明は省略されています。ただ、「不敵の男なれば」とあるだけです。くりかえしますが、山の奥深くで、美しい、顔の色がきわめて白い女が、黒髪をくしずっていたのです。白い顔と黒い髪という色彩の対比が、鮮やかに映像的です。この世ならぬ情景です。そう、それはけっして人間の女ではないのです。惑わされてはいけません。なにか、モノノケか妖怪のような存在に違いない。この猟師は「不敵の男なれば」こそ、そうした妖異なるモノとの遭遇にも怖気づくことなく、「直に」銃を差し向け、みごとに仕留めることができたのです。
(第二章 山からの呼び声)


「白い顔と黒い髪という色彩の対比が、鮮やかに映像的です。この世ならぬ情景です。そう、それはけっして人間の女ではないのです。」

要は「美しすぎて人間じゃねぇ」ってことですね。『遠野物語』の刊行は1910年。さらにこれが元々古くからあった民間伝承をまとめたものであることを考えれば、フルカラーでもモノクロな羽衣狐さまは日本古来の妖怪イメージを踏まえた上での表現と思われます。今まで印象面から羽衣狐さまの白と黒のコントラスト表現を語ってきましたが、これも古くから裏打ちされた表現ということですね。うーむ、羽衣狐さまは奥が深い。