オタクとは何か?私とは何ものか?

海燕さんの記事を読んで考えが深まり一方でやや落ち込み、敷居さんの記事を読んで救われたこと。

 結局、アニメにしろ、漫画にしろ、単なる趣味のひとつにしか過ぎないのである。それを意識しすぎず、素直に楽しむことは健全なことだと思う。その意味では、オタク文化に対して優越感を抱くことも劣等感を感じることも、同じひとつの価値観の鏡像に過ぎない。

 さて、ここでは仮にその「名前のない集団」が生まれつつあると仮定して、それに名前を付けてみることにしよう。「オタク」と「非オタク」の境界線を意識しないということから、「ノーボーダー」というのはどうだろう?
(「オタク」も「一般人」も死んだあとに。 - Something Orange)

  • オタクとは何か?

私にはよく分からない感覚だが、どうも最近の「オタク」はオタクであることにアイデンティティを抱き、ステイタスに思っているふしがある。

今の「オタク」は空気を読んでオタクというキャラを演じているだけで、だから空気が変われば将来的にはオタクでなくなると思う。

舞城王太郎の新作『ビッチマグネット』では主人公の少女が弟を殴って「突然の羞恥に駆られ、いやいやそんなバカらしいほど単純な、いかにも《トラウマを抱えた子供》チックなキャラに落とし込むのに反発しかける」場面があるが、そんなふうにキャラを自覚的に演じる現代人にとってオタクとは使い捨てのキャラの一つでしかないのかもしれない。

ビッチマグネット

ビッチマグネット

しかし、「趣味嗜好によって自分を規定することがない」ノーボーダーは、空気を読まないノーボーダーは将来的にもオタクのままであろう。オタクを公言していた「オタク」がオタクをやめ、オタクを意識しないノーボーダーがオタクである状況を想像すると面白い。


  • 私とは何ものか?

海燕さんの記事を読んで以上のオタク観がまとまってきた。そして私もこのノーボーダーってやつなんだな、と思って読んでいた。途中までは。

ところが、「他人の評価ではなく、どこまでも自分の価値観に従って趣味を選ぶのがノーボーダーなのである」まできて「あれ?」と思った。

私は他人の評価を気にする。すごく気にする。普段から漫画好きを隠すようなことはないが、それは漫画が日本では決して高くないとはいえある程度の社会的認知を得ているからで、「漫画=キモオタ」のような空気があれば私も漫画好きを隠す可能性が高い。

それでも漫画は特別好きだから読むのをやめないだろうが、アニメやエロゲになると断言できない。「好きなものは好き」を通せない。どうしても空気を読んでしまうだろう。そもそも漫画を「特別好き」と言っちゃう時点で一つの文化に過剰な思い入れがある。


ノーボーダーに近しいものは持っていると思う。なにせ「趣味とは「ただ好きなだけ」のものであって、じぶんを定義するための道具ではない」は当てはまる。「アニメやゲームは好きだけれど、「オタク」という言葉でじぶんを定義することには違和感がある」も当てはまる。しかし、「他人の評価ではなく、どこまでも自分の価値観に従って趣味を選ぶ」ことはできない。

私は「オタク」と比べればノーボーダー近いだけの、相対的なノーボーダーに過ぎない。
では、「オタク」にも「一般人」にも、そしてノーボーダーにも属せない私は一体何ものなのだろうか?

「あなたは何ものでもない」と父親は感情のこもっていない声で同じ言葉を繰り返した。「何ものでもなかったし、何ものでもないし、これから先も何ものにもなれないだろう」
村上春樹1Q84 BOOK 1』)

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1

以上のようなことで私は海燕さんの記事を読んでやや落ち込んでいたが、後日敷居さんが書いた文章で救われることになる。
敷居さんの考えるノーボーダーは、基本的には海燕さんの定義と変わらない。敷居さん自身、「他人にどう呼ばれるかは自分の活動次第で変わってくるだろうし、自らの行動の結果なのでそれに文句を言うつもりはあまり無いけれど、どう呼ばれようとそれに合わせるつもりもあんまり無い」と言う。

ただ、名前がよかった。

 あるジャンルの深いところに潜っていくのは確かに楽しい。しかし、ジャンルとジャンルの境界で踊るのは、僕にとってはさらにスリリングで楽しいことなのです。

敷居の先住民は、そんな敷居の住人たちを応援しています。
敷居に住む人々 - 敷居の先住民

私は志村貴子先生が大好きなので、この「敷居の住人」という言葉はノーボーダーとは違った意味合いをもつ。ノーボーダーよりも広範囲の、誰にでも当てはまる意味が。

ノーボーダーは海燕さんにより定義付けられてしまった。そのノーボーダーのカテゴリに自分は属することはできない。結局のところ集団化する、集団化しようとする「ノーボーダー」はノーボーダーなんかじゃない。それはある種「オタク」と変わらない。

だから私は敷居の住人だ。どこに属するわけでもない。どこにも属せない。そして、どこに属さなくてもいい。

敷居の住人 新装版 1 (BEAM COMIX)

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