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ノベマスのニコ動的「進化」

  • はじめに

ノベマスとは?→NovelsM@sterの略

NovelsM@sterとは、アイドルマスターTHE IDOLM@STER)を題材にしたニコニコ動画で展開中のMADで、iM@S架空戦記の範疇に入れにくいアドベンチャー形式やビジュアルノベル形式などの形式を取ったMADであり、また、それらのMADに付けられるタグのことである。
NovelsM@sterとは (ノベルズマスターとは) - ニコニコ大百科

簡単に言うと「アイマスを素材にサウンドノベル作ったお」ってことです。アイドルが戦うやつは架空戦記って言います。説明テキトー過ぎですね。今回はノベマスの中でもコメディ系に属する作品についてのお話。

  • ニコ動の特色、それはコメント

ニコ動においてコメントがマイナスに働く動画がある。と言うと真っ先にネタバレや荒らしが浮かぶが、そういったコメント自体がマイナスであるものは除いて考える。ここでのコメントは単体でみれば悪いイメージをもたないものだ。

前提として、多くの視聴者はコメントを消さず動画を観る。

画面の上のレイヤーに流れるコメントは動画を観賞する上で、基本的には邪魔になる。それでもコメントがあるのは、コメント自体の面白さがあったり時間の擬似的共有ができたりと、良い面があるからだ。良くも悪くもコメントはニコ動の特色だ。

  • コメントと動画、両方追わなきゃなんねーのが視聴者のつらいとこ

ニコニコ動画において視聴者は動画とコメント両方を同時に観ている。するとスピード的にどちらかを追えなくなるという事態も、当然起こりうる。

短い間に同時に多くのコメントが流れたり、長く難しいコメントがあったりすればコメントに時間をとられて動画を追えなくなる。そして画面の切り替わりが速ければ動画を追えなくなる。問題はどちらも単体なら追う余裕があっても、視聴者は両方同時に観ているために追えないという点だ。


分かりやすい失敗例を出す。



これは以前、私が製作に関わった動画だが、特に冒頭部で「文字送り速い」というコメントが目立つ。これもコメントを消して動画だけを観るなら格別速くはない。しかしコメントのついた結果、文字送りの速い動画となってしまった。


読むのが遅い人への配慮という以上に、コメントを意識して、ノベマスは文字送りにやや間を長くとる。これはノベマスに限らず手描き動画などでも常識的手法だ。

  • コメディ系ノベマスは如何にして生まれしか

ノベマスの歴史は新しい。古いものでも2007年、そして本格的に拡大したのは2008年。タミフルP(『エロゲーっぽいアイマス』)・ストレートP(『アイドルマスター あっというま劇場』)・ペデューサーP(『アイドルマスター  ドタバタ紙芝居』)の爆発的な人気によるブームに加え(需要の拡大)、すいぎんPの紙芝居クリエーターにより動画製作の敷居が下がった(供給の拡大)ことがある。特にストレートPは「ストレート一門」のタグができるほどに後続作品を生み出したPで、実はペデューサーPもこのストレート一門に属する。

私は当時の状況をリアルタイムでは知らないが、コメディ系ノベマスはこの3シリーズに元がある。

ストレートP(・タミフルP)→ペデューサーPの流行らせたのは、複雑で大きくシリアスな話のない、ある程度とびとびで観ても面白い(笑える)、冒頭に定義したノベマスの中でも最も人気のある「コメディ系」作品である。

これらの動画には今の視点からはダメ出しの来そうな、例えば空中浮遊(キャラの立ち絵の浮いている状態)なども見られるが、それでも今日の新作として上がっても十二分に渡り合えるどころじゃないほど面白い。

3人の中で私がすべての動画を観たのはペデューサーP(以下ペドP)のみであるが、ペドPの動画は完成されている。今観ても「スキ」がない。

私が初めてこれを観たとき「これ以上は出ない」と感じた。ギャグのセンスとしては最高レベルにあり、コメディ系ノベマスはこれから段々と縮小して、話を重視したものが流行るだろう、と(*当時アイマス動画を見始めたばかりだったのでなんとなくではあるが、確かに思っていた)。


しかしそれから1年も経つと、その考えも変わってきた。大げさに言えば、まだノベマスには「進化」の余地があるように思えてきた。もちろん時間の経過によって技術の発達や素材が豊富になったこと(さらには視聴者の好みの変化)もその大きな理由だが、この初期コメディ系ノベマスが、まだ超える余地のある、完全ではない作品だと思えてきたのだ。

そしてそれは、以降の作品で証明されている。以下、このコメディ系ノベマスの人気作品の変遷をみながらそれを説明したい。

  • 『ドタバタ紙芝居』

ペドPの『ドタバタ紙芝居』(以下『ドタバタ』)は2008年9月から始まった作品で現在も(一応)継続している。



前述したように『ドタバタ』はコメディ系ノベマスの元祖であり、この時点で恐ろしいほど高いレベルで完成されているが、ニコ動という場所を含めて考えると必ずしも完璧とは言えない面もある。

例えば、『ドタバタ』ではたまに、動画の中で複数の話が同時進行するという手法がみられる。これは一定時間に多くのギャグを詰め込めることを意味し、当然ものすごく面白いわけだが、見る側からするとやや「忙しい」。視聴者は動画を追うだけで精一杯となり、その間コメントはつきにくいし、コメントを読む暇もない。結果として面白さに比してのコメント数はやや損をしたと言えなくもない。

また「忙しい」ネタは嫌われることもある。コメディ系ノベマスにおいては、視聴者がいちいち停止ボタンを押さずとも分かるような、何も考えずにテンポ良く観ることのできる作品が人気だ。
実際、後出する後続の人気作品ではこの手の「忙しい」ネタはあまり見られず一画面にネタを詰め込み過ぎない、流れのままに観られるものとなっている。

なお、ペドP自身もこれは分かった上で『ドタバタ』を製作しており、この「忙しい」ネタはバランスを損なわない程度に入れていることは明記しておかねばならない。


このネタ手法に限らず『ドタバタ』ではネタの詰め込みがものすごいが、それゆえにコメントがつかない・見れないという惜しい点もある。見方によっては完全だと思っていた、完全なはずの『ドタバタ』も完全ではなくなる。

その原因がニコ動における特色、つまりコメントにあると思う。『ドタバタ』は動画として完成されていた。しかし一つの動画として完成され過ぎていた故に、ニコ動的にはそれを超えうる作品を生み出す余地が残されているのだ。

  • ノベマスのニコ動的完成とは?

重要なポイントとして、商業作品の転載などと違ってイチから作れるノベマスのような動画はニコ動にあげることを前提にしており、つまりは始めからコメントを意識して作られているということだ

そして、結果的にコメントがついて面白くなった動画と、コメントがつくことを前提として作られ面白くなるべくしてなった動画とは意味が異なる

前者の例は枚挙に暇がない……というのはニコ動を観たことのある人なら分かることだろう。

始めからコメントを意識して作ることのできるノベマスは、後者を意識的に狙うことができるのだ。それを私はノベマスのニコ動的完成と(勝手に)呼ぶ。

後者の例として、『ドタバタ』以降のコメディ系ノベマスで人気の出た動画を出そう。

  • 『姉、ちゃんとPしようよっ!』

『ドタバタ』から約1年後、2009年6月には腰痛Pによる『姉、ちゃんとPしようよっ!』(以下『あねぴよ』)が始まる。



これもドタバタと同じくコメディ系の話だが、大きな違いは、ネタの多くが何かしらの作品のパロディであることだ。ただのギャグに対する受け(「wwww」など)より、「元ネタが分かった」というコメント(「ジョジョw」など)の方がはるかにつきやすいというのは普段動画を観ていても分かることだ。

前に『雪ねぇの部屋』(こちらもコメディ系ノベマス)が構造的にコメントがつきやすいという話をしたが、『あねぴよ』の場合はネタにパロディを使うという手法的にコメントのつきやすい動画となっている。

そしてコメントのつきやすい『あねぴよ』は、コメントのついた結果、元ネタの答え合わせをも同時にできる動画として更に上の完成をみせる。

1話再生数が10万を超える『あねぴよ』も、全てのネタの分かる視聴者は極稀で、多くはコメントをみて「自分の分からない部分も元ネタのある面白い場面」であることを理解する。これはコメントのない動画単体では不可能だ。仮にこれがコメントがない動画であったらどうなっただろうか?「元ネタわかんね→つまらん→みない」という視聴者も少なからず出てきたはずだ。

『あねぴよ』がコメントで得をしたと言いたいわけではない。より大胆に、『あねぴよ』はコメントによって(ニコ動的に)完成された動画である、と言いたい。


動画として完成していた『ドタバタ』が、ニコ動にあげることで完全ではなくなったのに対し、『姉ぴよ』はコメントにより完成する動画となっている。これはニコ動を意識したある種の進化であると思う

先にあげた『ドタバタ』の「忙しい」ネタが『あねぴよ』という後続作品では抑えられたのも、視聴者は動画に追いつくのが精一杯ではいけない、コメントも同時に見るという前提で作らねばならないという視点の、文字送り速度に留まらない、より応用したものだろう。

  • 『雪ねぇの部屋』

『あねぴよ』から半年後の2009年12月、ダイアルアップPの『インターネット物語 雪ねぇの部屋』(以下『雪ねぇ』)が始まる。



ここに至っては視聴者というメタ視点を置くことで一度完成し(動画としての完成)、コメントにより「のぞかれていることを前提に作ったチャットをのぞく人たちのリアルタイム反応」がプラスされる(ニコ動としての完成)という、構造的な「二重の完成」をみせている。

話の構造的に『雪ねぇの部屋』がコメントのつきやすい動画となっていることは以前ふれたが、そのコメントのついた(ニコ動的完成)結果の効果も大きい。

複数の話が同時進行する「忙しい」ネタが、複数の話が、動画の話とコメントの話となることで(当たり前だがコメントの話の方は視聴者も参加可能)、視聴者はいつも通り動画とコメントを追うだけで「忙しい」ネタの効果を得る。以前もふれた「情報量は少なく笑いは多く」がここでも達成されている。

ここまでの変遷は技術的な進化ではない。しかし、後の作品となるほど先鋭されている。この「進化」を私は非常に面白いと思う。

    • 関連

『雪ねぇの部屋』胸囲のコメント率の謎に迫る!

  • まとめ

製作段階からコメントを意識できるノベマスは、コメントによる動画への効果を先読みし操作できる。この点がニコ動的に優れた点であり、これを意識することでより面白くなるし、そこに新しい作品の生まれる余地がある。

最近はノベマス講座や素材が拡充し後の作品がどんどん技術的に有利となっているが、コメントという視点からも新しいノベマスが作られればいいなぁと、一ファンとして期待しております。

  • 最後に

誤解を招くといけないので明言しておくと、私は後の作品の方が面白いと言っているわけではありません。単に後の作品の方がコメントを上手に活用しているというだけです。ただ、それがニコ動においては重要なこと。
まー、それになんだかんだ言ってやっぱり『ドタバタ』が一番面白……(以下のコメントはこのブログが腰痛PとダイアルアップPに見られているようなので削除されました)


今回は代表的な作品を比べただけなので、他の作品で既により先鋭的なものが導入されていたかもしれません。ここではストP以降のコメディ系の流れに属していてかつ人気のあるシリーズの変遷ということで3作品のみを採り上げました。ちなみに『ぷよm@s』は架空戦記、『ひまわり』は教養講座、『アイドル寮空室あり!』はイイナハナシダナーということで除いています。私自身ノベマスは有名なやつをかじったくらいなので「ここはおかしい」というご指摘あればお願いします。