『ぬらりひょんの孫』第百二十四幕「誕生」が髪回

本州では今日発売となったジャンプ43号の『ぬらりひょんの孫』がすごかったので感想。以下ネタバレなので単行本派はお気を付けを。



  • 羽衣狐様

「京都中から――そしてはるばる江戸や遠野から妾たちを祝福しに 全ての妖どもよ・・・大儀であった」(羽衣狐様)


羽衣狐様を倒しに京都までやって来たリクオらに「祝いに来てくれてごくろう」と労をねぎらう発言。このへんの余裕の表れか独特なユーモアなのか、はたまた天然なのか判断付きかねる羽衣狐様のセンスは、鹿金寺で「最強の技」を受けながら「早く見せろその最強とやらを」と言ってのけたことからもうかがえます。


「かつて――人と共に闇があった 」
(中略)
「けれど人は美しままに生きていけない」
(中略)
「妾はいつかこの世を 純粋なもので埋めつくしとうなった」
(中略)
「それは黒く どこまでも黒く ―― 一点のけがれもない純粋な黒」(羽衣狐様)





「黒」は闇を連想させる色。これに関してはこれまで何度も言及してきました(関連:羽衣狐さまの前髪はなぜ長いのか? / カラーでもモノクロな羽衣狐さまの不思議)。


この「黒=闇」をはっきりつなげたところが今回の演説のポイント。


そもそも羽衣狐さまがなぜ脱いたかといえば、出産という「母」たる役割を果たすために学生=未成年の象徴たる制服が邪魔で、これを剥ぐことで宮崎駿の言う「母性の象徴」(平たく言えばおっぱい。でも平たくない)を露わにし視覚的に母性イメージの表現していたわけです。

よって出産を終えた今「黒」の闇イメージを取り戻すのは自然で、これを演説の流れで行うシークエンスは感動もの。後にキュアサンシャインと並んで2010年の名変身シーンに評されることでしょう。……まぁ、なんでカバンまで復活してるかは分かりませんが。

  • 「守る」

京都編は「守る」がテーマのように思われます。特に今回はそれがよく表れていました。

「この黒き髪―――黒きまなこ 黒き衣のごとき完全なる闇を さぁ……守っておくれ 純然たる闇の下僕たちよ!!」(羽衣狐様)


鵺の誕生を目の当たりに、ゆらちゃんは「京都を……鵺を……止められへんかった」「守れなかった」と嘆き挫折しかけます。

ここでリクオが羽衣狐さまの演説「守れ」に疑問を持ちます。「鵺は闘えないのか?」
本来人間である鵺が戦えないわけがなく、羽衣狐様のハッタリ(?)に気付いたリクオらは再び希望を取り戻します。

「まだ止められる その祢々切丸(リクオ)と……破軍(ゆら)さえあれば!!」(13代秀元)

勝利条件の再確認→勝機を見出し羽衣狐様の元へ向かうリクオら。その前に京妖怪が立ちはだかるが、この前にも黒田坊が「リクオ様を守れ」とやって来る。どうやら「守る」は今の展開のキーワードのようです。思い返せば「弐条城は明け渡していい。だが、そこで奴らは守勢に回る」という13代秀元の言葉もありましたし。



(「守るんや京都を… それが陰陽師の使命なんや」)


「鵺」の正体が同じ陰陽師と知ってやや心が揺らいでいたゆらちゃんですが、犠牲になった一族の陰陽師を回想。「京都を守る」という使命を思い出し、再び立ち上がります。……ところで一人死んでないやついるんだけどゆらちゃん。え、これ死亡フラグなん?――と、思ったところで予想通りの展開に。ここまで一話。


全体の三割を占める羽衣狐様無双だけでも十二分を超えて満足ですが、上に見た展開もすばらしい回でした。ジャンプ39号巻末コメントでは椎橋寛先生の「夏休みが1日とれたので旅館に一泊。新鮮な気持ちで朝の5時までネーム描きました。」 との涙が出る御言葉が掲載されましたが、それはこの回のネームだったかもしれません。

本当、自分の中で今年の漫画ベストエピソード候補に選出されるレベルですごい回でした。必読。