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「魔王、激怒。【TGSのその裏で】」の動画としての巧さ


題材の「その発想はなかった」とあまりのタイミングのよさでそっちばかり話題ですが、これ技法としても(「も」どころでなく)とても巧いと思います。

  • 冒頭のつかみ

動画に限らずつかみが大事ってのはよく言われますが、この動画も冒頭25秒のつかみが巧いです。

まず上に消えていく文字送り。動画の上の方ってコメントとかぶるから読めなくなっちゃって、特にこれだけコメントついてる今だと最初に文字列が出るところかせいぜいもう一つ上の文章しか読めません。だから実質文字列が動画に映っている間の時間よりも読むための時間は少ないと考えていい。つまり視聴者としては速く読まなきゃいけないように感じるわけです。実際は他と比べても文字読むのが速くないとついていけない動画では決してないので、これは「速く読まなきゃ」という錯覚の現象ですが。それが自然と動画に対して能動的な姿勢を生み出します。

そしてコメントの動き(左方向への動き)と背景の動き(右方向への動き)が逆です。例えば電車の中からすれ違う電車を見ると実際よりも速く動いているように見えるアレと同じ効果で、体感的にコメントの流れを速く感じます

この効果も上と同じく速く読まなきゃ錯覚ですね。

この手の動画で「開いたけど最後まで観れない」人にありがちなのが「(旧情報を読み終えて)目がヒマになる」のがイヤということで、それを避けるために「動かしている」動画はけっこう伸びてるなーと感じます。動いているということはリアルタイムで新情報が送られてくるわけですから。もっとも新情報というほど情報量多くなくていいのですが。要は目がヒマでなくなればいいだけなので。そんなわけで「紙芝居」であっても冒頭はつかみとして「動画」にしてるといいと思います。

  • セリフ枠・背景

普通のノベル形式の動画では既存のノベルゲームに倣って「話しているキャラクター以外の立ち絵を半透明にする」ことで誰が話しているか分かりやすくしているのですが、この動画では各キャラクターの髪の色とセリフ枠の背景を同色に揃えることでそれと同じ効果をねらっています

この表現ではキャラクターを半透明にする必要がないので、掛け合いの流れで半透明にしていると不自然なところでもキャラクターをそのままに動かせます。

もちろん普通の動画ならそんなことする必要はありません。そういった場面はたいてい半透明にしなくとも誰が話しているか分かるシーンだからです。
しかしそれは視聴者(の多くが)知っているキャラクターだからという前提があります。ところが魔王エンジェルの立ち絵・キャラ名を全員把握している人ってとても少ないので、そういう意味ではこの子たち半分新キャラ・オリキャラなわけです。そういう特殊なキャラクターを動かすにあたって、キャラクターの髪の色とセリフ枠の背景を同色に揃えるという表現は効果的でマッチしています。

また色分けしたことでセリフ枠を重ねても誰と誰が話しているか視覚的に分かりやすくなっていて、とても「知らない」キャラクターの動画とは思えません。



ここまで伸びたのは「その発想はなかった」とタイミングのよさが原因でしょうが、やはり伸びる動画はそれだけ丁寧に作られているなぁ、と改めて感じました。