「静かな救済」の物語 : 江本晴『思春期飛行』

今日たまたま読んだKISS(No.22 2010年11月10日(水)発売)に載っていた江本晴先生の読切『思春期飛行』がとても面白く、ついファーストキスしちゃいました(訳:初めてKISS買ってきました)。

 Kiss|No.22 2010年11月10日(水)発売号

思春期になると人は一定期間飛べるようになる
タイミングはまちまち
でも皆一様に浮かれ出す
(江本晴『思春期飛行』)


思春期の一定期間、誰もが飛べるようになるという世界設定。


(朝陰のぞみ)

走り高跳びのエースだったが、突然「飛べる」がきたために中学最後の大会を出場停止となった朝陰のぞみ。彼女はショックで自殺を試みるが、失敗。そこで秦啓人と出会う(*漫画では冒頭から秦の視点なので「突然空から女の子が降って来た」図になっている)。



(秦啓人)

のぞみは中学三年だが、(おそらくは)部活にばかり打ち込んでいたため「今さら机に向かうくせなんてついてない」と言う。それを聴いて秦はのぞみを「利用」しようと考え、勉強を教える代わりに自分の撮る動画に出てくれと提案する。


冒頭で自殺を望んだのぞみの救済を中心に話が進むかと思いきや、実はそれが秦の救済にもつながっていたということが徐々に明らかにされていく。この流れが、30ページの読切でタイトル通り「静かな救済」きれいに詰められ、まとまっています。

やや抽象的にすごいと感じたところを一文でまとめると(この箇所は作品を読んでから再読を推奨)、「何の関係もない二人が」、「恋愛や激情のぶつかり合いなど大きな事件を経ずに」、「外から見て結果的には何も変わっていないにも関わらず、二人の内面だけが変わった」ところ

設定には大きな比重が置かれず、悪く言えば活かされていないように感じましたが、見返してみると『思春期飛行』は読切でなく一話完結の読切シリーズのもよう。つまり今回の話は設定に重きが置かれなかった回ということで納得できます。

江本晴先生はまだ単行本の出ていないようなので、今回が5話の『思春期飛行』が初の単行本になりそうです。今後の動きにも注目。