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三重奏の物語 : 『恋愛(いたずら)』

漫画

id:soorceさんとこの立原あゆみデビュー40周年記念イベント参加記事で、『恋愛(いたずら)』の感想です。


恋愛 1 (ニチブンコミックス)

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主人公・地味亘は年若いやくざだが、ひどく冷めたところのある青年だ。彼には生きることに対して諦観も見える。
物語の進行により徐々に、彼が憧れる兄貴分の妻、姐さんとかつて一度過ちを犯しており、その罪の意識を抱えて生きていることが明らかにされる。生きる目的を見い出せない彼の前に、憧れである兄貴の死という事件が訪れる。彼の復讐劇が『恋愛』のメインストーリーだ。
また地味の”シマ”であるバー・「いたずら」を訪れる人々。様々な男と女の人生が、地味の復讐譚の裏に、また表に出る。その二つは基本的には交わらない。「やくざ」と「かたぎ」の人生は決して交わることのない。
そして両者の間にはバーのジュークボックスから様々な曲が流れる。それが何を意味しているか、意味しているものがあるかは明らかにされない。ジュークボックスの選曲はすべて猫の仕業、ということになっているからだ。
決してつながらない物語の三重奏に調和を見出したとき、読者の心に静かな波が立つ。


立原あゆみ先生の漫画を読むのは初めてだった。正直、始めはやや読みづらさを感じた。それは表現の強弱・濃淡をハッキリつけない、いわば味付けの薄い作風に原因があったと思う。それだけ自分がジャンクフードを食べ慣れている(もしくは巷にジャンクフードがあふれている)ということかもしれない。だが慣れると今度はそれが前段末尾の「静かな」にかかる良さが実感できた。