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『君に届け』黒沼爽子は髪を切らない

黒髪ロング

君に届け』の好きなとこは爽子が黒髪ロングなとこです!……と、いうことを順を追って説明していくよ。


君に届け 12 (マーガレットコミックス)

君に届け 12 (マーガレットコミックス)


先日のみやもさんのご指摘にみられるよう、黒髪ロングは過去の時間を内包しているものです(身辺雑感/脳をとろ火で煮詰める日記: 羽衣狐様に寄せて:ハイライトがない黒髪ロングなキャラの魅力)。

しかし、この内包された過去の時間は髪の黒という色と相まってネガティヴなイメージを示すことも珍しくありません。
そうした過去の「業」を(文字通り)背負っているのが黒髪ロングだとするなら、黒髪ロングをやめる、つまり髪を切ることでそこからの解放を表すというのは、映像や画像を伴う作品においては非常に分かりやすい表現です。物語のラストや数年後の姿として、また新章に入る段階で、髪を切るというイベントはよく見られることでしょう。歴史的に見れば髪を結ったり切ったりは女性の社会進出の象徴として、実利も伴い現実に行われていた姿でもあります。


この流れで『君に届け』を見ると、爽子の黒髪ロングも(業とまでは言わないにしても)、ネガティヴなイメージをもっています。それは「貞子」と呼ばれることになった陰気な見た目として黒髪ロングが指されている物語開始時点からのものです。

君に届け』のこれまでで、爽子には少なくとも3回、髪を切る可能性がありました。

 ①2人の友達ができたとき(少数とはいえはじめての理解者ができたことで爽子の意識が解放された)
 ②クラスのみんなに受け容れられたとき(社会的にネガティヴなイメージから解放)
 ③風早と付き合い始めたとき(新章の区切りとして、また爽子内部での「それまでの自分」との決別の象徴として)


ところが、結果的に爽子は髪を切っていません(単行本12巻現在)。この件に関して作者の意図は分かりませんが、爽子のようなキャラクターがここまで髪を切らずにきたことは当たり前でないことは、ここに強調しておきたいです。


髪を切ることが過去からの解放を示す分かりやすい表現でこれまで多様されてきたことは、一方で黒髪ロングに対する負のイメージを強めることにもなりました。
その中で、現代の黒髪ロングを描いた作品の中でも代表的な『君に届け』がここまで断髪イベントを回避している事実は、その傾向に歯止めをかけているようで、いち黒髪ロング好きとしてとても好ましく感じます。

また黒髪ロング萌えの風早くん(たぶん)が爽やかイケメンというのも、「黒髪ロング好きはキモオタ」という負のイメージを覆していてこちらも好感ですね。