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『3A07』の時間圧縮

昨年話題になった 『3A07』が一周年ということで、今更ながらこの動画の時間圧縮がすげぇという話を。あ、もちろん動画のネタバレあります。





『3A07』は大きく分けて3つの時間を内包している。①P生前(過去)②Pの死から立ち直れないあずさ(現在)③その後のあずさ(未来)……である。この時間視点で 『3A07』を再構成すると以下のようになる。

①冒頭〜OPまで/坂の上〜病院まで
②OP〜坂まで/自室〜歌詞作りまで
③ED/事務所での後日談/ラスト

  • 現在〜過去

まず、冒頭のライブからOPが実は「過去」の話となっている。初見ではライブとOP直後の事務所シーンをひと続きの「現在」に見てしまうが、実はライブは小鳥さん視点(?)での過去であり、OPも過去のPとアイドルの関わりを映している。それが分からないように隠されていることは映像による叙述トリックだが、同時に時間圧縮にも貢献している。

それが明かされる、物語の転機となるのが坂のシーン。ここでは基本的には「現在」が進行する中で、「過去」が重なりを見せながら、スムーズにフラッシュバックへ移行する。これはあずさの視点で映されていることに起因する。

さらに坂の上でPが倒れるシーンは、「現在」と「過去1(Pが倒れたとき)」「過去2(倒れたときとは別に坂に来たとき)」の3つの時間が重ねられ、以降の物語は急速な進行を見せる。

  • 現在〜未来

その後のあずさの姿を、他のアイドルの視点で、特典DVDという形でさかのぼって観る。これによってあずさ再起のシーンをあずさ視点のまま②から進行して映すよりも、より進んだ時間が作品に内包される。
同時に、この特典DVDがEDにもなっている。『隣に…』の歌詞が功を成し、「復帰したあずさの姿」「Pへ贈ることば」そして「ED」という3つの意味(この文脈で言うと時間)が、このシーンには込められている。


基本的に 『3A07』の時間圧縮は「一つの場面に複数の意味(時間)を持たせる」手法をとっている。動画にはPの好みという設定でレトリックが多用されるが、これもその時間圧縮との相性の良さからだろう。
この物語が22分弱。これほど詰め込んでいるのに観ていて全然そんな気がしない動画は、おそらくそうない。