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金髪ツインテールの解放と黒髪ロング魔法少女という可能性

ツンデレ」という言葉が流行って久しいが、それとともに進んでいたのは金髪ツインテールの収束だった。

もともと金髪ツインテールには「新しさ」があった。しかしツンデレという言葉とそれに代表される金髪ツインテールのキャラクターによって、金髪ツインテールは狭い枠組みに押し込められようとしていた。



そんな中でキュアサンシャインの登場は革新的な事件であった。キュアサンシャインとは『ハートキャッチプリキュア』で茶髪ショートヘアの美少女・いつきが変身した姿だ。「お嬢様」のイメージももつ金髪ツインテールは、女の子(=視聴者)の憧れる女の子らしいかわいさであり、それにボーイッシュないつきが変身することで、金髪ツインテールはそれまでツンデレの枠に収まりかけていたイメージを発散する結果になった。



特に手足を全開に指先まで伸ばした格闘は、かつての金髪ツインテールには――少なくとも「ツンデレ」には――ない新しい魅力だろう。
あるカテゴリにおいて、その既存イメージを覆すような革新的キャラクターが現れ、それが広く受け入れられたとき、そのカテゴリ自体が変化を遂げる。
私は幸いにもこのキュアサンシャイン変身シーンをリアルタイムで視聴したが、そのときは感動して「これで金髪ツインテールはあと3年戦える!」とまで思った。さすがに今のオタク消費スピードからすると3年は言い過ぎだろうが、キュアサンシャインという太陽の光は作品に止まらず、金髪ツインテールの未来までも照らすことになったと思う。

ところで私は黒髪ロングの魔法少女*1をほとんど知らない。『セーラームーン』のセーラーマーズは黒髪ロングだった。今でも強く支持される人気キャラクターだが、そのあとに続くものとなると、初代プリキュアキュアホワイトくらいだろうか?*2これもしばらく前の話だが、しかしセーラーマーズとキュアホワイトの間には大きな隔たりがある。変身後も髪型の変わらないセーラーマーズに対し、キュアホワイトは髪を結ぶ。ほぼ完全な黒であるセーラーマーズの髪の色に対し、キュアホワイトは青が強く見える。

何をささいなことを……と言うかもしれない。いいや、これは由々しき事態だ。変身後の姿を女の子の理想と考えば、なお。少女たちは金髪ツインテールに変身することはあっても、黒髪ロングに変身することはないのだ。


以前私はカラフルな作品では黒という色のイメージを嫌うため、青や紫のロングヘアのキャラクターが「黒髪ロング」のポジションにくるという指摘をしたことがある*3。しかし問題はより複雑だった。



「変身後の姿はより明るく色鮮やかにする」方向で進んでいるのならば、ここで黒髪ロングの立場はあまりに悪い。

カラフルな作品において黒は敵側のイメージが強い。『ハートキャッチプリキュア』でもキュアムーンライトが黒髪ロングに代替する紫として出ていたが、これも変身後の方が明るい紫となっている。

セーラームーン』の変身には、服装・アクセサリー・ハイヒールに意味があった。少女たちはよりかわいく、より大人っぽい格好に変身する。それが視聴者の願望でもあった。そして『プリキュア』に至り――髪を染めたりオシャレしたりが発展し広まったからだろうか?――変身は髪型まで変わるようになり、そして、そして黒髪ロングは失われた。

また『セーラームーン』の制服は社会的な保護の徴であり、セーラームーンを助けに必ずタキシード仮面は現れる。しかし『プリキュア』に至りタキシード仮面は消えた。少女たちは自ら戦うことになる。歴史的にも女性の社会進出の流れでロングヘアが失われていったことを思うと、ここでも黒髪ロングは分が悪い。

前段から繰り返しになるが、あるカテゴリにおいて、その既存イメージを覆すような革新的キャラクターが現れ、それが広く受け入れられたとき、そのカテゴリ自体が変化を遂げる。
セーラーマーズから時代を経て、黒髪ロング魔法少女の登場には、まだ時間がかかる。

*1:ここでの「魔法少女」には変身美少女も含む

*2:Panty & Stockingってなんすか?

*3:関連:これからの「黒髪ロング」の話をしよう