読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『STAR DRIVER 輝きのタクト』 : ワコ様の視点とポジティヴに投げ出された三角関係

アニメ

ミルキィホームズ以降のアニメは百合枠でまままとスイートプリキュアを観ているけれど、やはりミルキィのぶっとんだポジティヴさが懐かしく試しに前々からすすめられていたSTAR DRIVER 輝きのタクトを観たらなんとクリティカルヒットだった。タクトは三話まで観てヤンガンの漫画で読めばいいかと放っていたので、間十話以上観ていないことになる。特に調べたわけでもないので当然のごとく話はよく分かっていない。まぁしかしそんなことどうでもいいくらい面白かったのだ。
それは日常をメインに置いたバトルものというロボアニメにしては珍しく自分の好みのスタイルだったことがまずあるし、ミルキィのぶっとんだポジティヴさをどこかに感じられたのも大きい。またこれまでずっと何十年前から熱血主人公を持ち出して語らせなければ伝えられなかったメッセージを爽やかに美少年に現代的に伝えることに成功した革新的な作品としても観ていた。
どうでもいい細部ではワコ様の「タクトくん」の「タ」の発音がたまに笑えて慣れなかったし、あとタクトの発音も全般笑えた。ニチ・ケイトさんの綺羅っ☆ヒトカラは何度観たか分からないし、ミズノマリノは視聴再開がちょうど退場回だったから知らない。

さて、タクトは特に敵方に面白いキャラクターが多かったからか、メインヒロインであるワコ様を評価する声が小さいように感じたが、私はと言えばタクトに関しては完全にワコ様視点で観ていた。美少年二人が自分を獲りあってどうしようどうしよう少女漫画。

ワコ様はけっこう子どもだ。というか人妻で女子高生までいるあの世界はおかしいので年相応の範囲内なのだが、相対的に。友達に彼氏ができてどんどん先へススんで羨ましいわ委員長は自分の婚約者にアプリポワゼ(隠語)するわその婚約者は絶対十代じゃないわ何考えてんだか分かんないわ、そこにちょっといい感じの美少年が現れて人工呼吸はキスに含まれるかしらワコ様の悩みは愛くるしくかわいい。

そんなワコ様が三角関係を解決しなかったのは当然すぎるほど当然で、ラストはすごくポジティヴに投げ出してくれたと思う。三角関係を投げ出すとそれだけで文句が来るのは昔から変わらない流れだ。例えば近年だとマクロスF(テレビ版)なんかがそれだが、二人の間でふらふらしていたアルトと違ってワコ様(というかあの3人)の願いは「3人でいること」だったのが何度も繰り返されてきた通りで、だからあれは投げ出すのが正しかったのだ。それはタクト(スガタ)は「いつかスガタ(タクト)とワコが結婚して僕が遊びに来るのかな」と言い、ワコ様の気持ちは23話「だってタクトくんとスガタくんがそろってれば無敵だもん」によく表れている。

ワコ様はずっと3人でいたかったのだ。どちらかを選ばなければいけないなんてイヤだったのだ。婚約者に振り回され友達からはどちらを選ぶか何度も問われつづけ一途な委員長は参戦しワコ様はまた悩む。周りに振り回されるワコ様はキュートで、気づけば私は彼女を見守る視点にしか立てなかった(だから様呼び)。

そんなワコ様視点で観ていた私にとって最後のモノローグはごちそうで、これに関しては奈須きのこ先生の感想を読んでうんうん頷いた。

なにより素晴らしかったのは「どっちつかずヒロイン」ワコの「どっちつかず」さをクライマックスにもってきたところ。視聴者側が「どっちを選ぶの? というか、なんで二股を維持してんの?ビッチなの?虚淵玄好みの女なの?」とウヤムヤっとしていた問題を、最終決戦に合わせて語らせる手法は発明ではないでしょうか。
彼女とはまったく関係のない映像の激しさ、状況の激しさ。あの「大問題」に「小問題」をリンクさせる事で、彼女がどれだけ苦しんできたのかを表現する。恋する少女にとっちゃあ世界の終わりと同じぐらい、“あの問題”は辛くてどうしようもないものだったんだよ、と。もちろん、彼女の悩みに解答はない。問題は解決できない。
「これで万事収まった、綺麗におしまいですよ」なんてエンドロールは存在しない。旅は続いていく。タクトという星の王子さまが自分の星に帰るにしろ残るにしろ、彼らが大人になるまで物語は続いていく。そして分別がつき、限界が見え、居場所を作ってしまった時にようやく若者は思うのだ。「ああ、俺の旅はもう終わっていたんだな」と。
2011/4/3 : 青春は続く。(きのこ) - 竹箒日記


最終話の感想で「ワコ様結局どっちが好きだったの?」という声がまだ聞かれたが、そういう好きな人が一人じゃなきゃダメみたいなもののアンチテーゼ的にワコ様は悩む。悩む。ワコ様は選べないのだ。3人でいたいのだ。少なくとも今は。
ずっと周りに振り回されていたワコ様が銀河で戦う二人を見守りながら三角関係を前向きに放り出すラストはなんとも清々しいではないかポジティヴではないか青春ではないか君の銀河は輝いているではないか。