読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『想いの欠片』:恋をするなら女に限る

長編百合が好きなんですが百合漫画の長編はそう多くありません。その中で昨年は『GIRL FRIENDS』が終わり『オクターヴ』が終わり、今年にはアニメ化もされた『ささめきこと』が終わりました(雑誌で追ってはいないので『ささめきこと』の完結は未確認)。

中でも『オクターヴ』がなかなか類を見ない百合漫画として好きだったのでしばらくその方向で期待できるものを探してうろうろしていましたが、ようやっと見つけました。竹宮ジン『想いの欠片』です。


想いの欠片 1

想いの欠片 1


昔から同性に惹かれる女子高生・高岡ミカ。バーに通い知人のカフェに入り浸るミカは高校ではカミングアウトしておらず、学外に自分の「楽園」を見出しているミカは、ビアンとしての生活に慣れているように見えます。あることをきっかけにミカはイケメンでゲイの原田と親しくなります。原田の妹でお兄ちゃん大好きな美少女・マユは兄が同性愛者であることを知り、兄と親しいミカに近づきます。そうしてマユは次第にミカを意識するようになります。

ミカは過去の出来事からか恋愛に対しあまり積極的ではなく、高校生にして今の生き方に慣れていてさばさばとしています。一方のマユははじめて同性として意識したミカの生き方を知り戸惑います。行動力のありそうなマユが今の気持ちからどう動くかが実に楽しみなところで一巻の後半からは視点が動き、ミカの入り浸る喫茶店のマスター・松本タカコとその同居人で人気小説家の工藤ユイの二人の過去話に移ります。ビアンとしての生活に慣れているミカから見ても不思議なこの二人の関係はまだまだ何かありそうですが、「高校を卒業したら働かせてもらう」と言っているミカが「想いの欠片 1piece」のラストと「Love&Pieceミステリアスビューティー・デンジャラスビューティー」ではウエイトレスとして働いていること、またミカの髪が伸びていることから、ミカの高校時代は過去の話であると分かります。

そうなると高校時代と卒業後の話を交互に展開していくのか?もしくはこれから卒業後の話に移るとして早々に学校を舞台から除いたことで関係の薄れたマユがミカとどう接していくのか?それともマユの話はミカの出会った一人として短編的に処理されておしまいなのか?どちらに進むかは雑誌をチェックしてないので分かりません。が、どちらに振られても面白そうです。まぁ一巻表紙からしてもマユの話がこれで終わりってことはないと思いますが「Love&Piece」でマユの話が出ていないので、まだこれからという感じでしょうか。

この漫画で特にすばらしいと思うのが、ひとつひとつのエピソードが独立した短編として読めるように作られていること。短い一話での起伏がしっかり練られていることから、こうして単行本でまとめられたとき非常に読み応えがあります。これは雑誌『楽園』の特徴なので連載作品の全てに言えることですが、その中でも短編であり長編である構造が特に上手くいっているものと感じます。それは、あからさまに似たようなことを続けたり毎回の視点を変えたりして短編として作っている姿勢を感じさせず、ひと続きの世界が描かれる中で気が付けば一話一話が短編としても完成しているということ。おそらく主軸となるストーリーが明確に設けられていないため世界を切り取る短編の構成が合っているのだと思います。よく少女漫画などで第一話だけ短編として取り出しても完成していると感じることがありますが、それを毎回見ている感じ。そのため今後どう展開させるかはかなり気になります。ところで一話一話が短編として読めるというのは初めて雑誌を買って途中から読み出す読者に優しいので他誌の長期連載作品も考えてほしいところ。

表紙の堂々と「こちら側」を意識しているキスシーンは二人とも余裕があってステキで、ミカとマユがこういう関係になる日がゴールなのかなと思うと楽しみ。あと身長が高い人と向き合っているとき(ミカ→原田、マユ→ミカ)ちゃんと見上げているように描かれているのも丁寧さが見えていいです。身長差はわりと意識的につけていると感じます。

甘々でないドロドロでもない百合というかビアンの世界。巻末の作者あとがきでは「この漫画はビアン以外バイ・ゲイ・ノンケが出てきます。故に仕事してた百合誌では無理だと思ってました」と書かれています。理由は全く同じというわけではありませんが、新生百合姫創刊号で『オクターヴ』に対し編集長が「百合姫じゃ絶対できないこと」とコメントしていたことを思うと、こういう甘々でない百合は百合誌では出ないものなのかもしれません。も、もったいない……このへん百合男子の意見を聴いてみたいところです。

多くの人が異性に恋をする だけどそうじゃない人もいるだけの話
「どうして?」とかじゃなく 「どうしても」な だけ…