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『この彼女はフィクションです。』完結4巻発売記念(一人)対談書き起こし

※本日『この彼女はフィクションです。』完結4巻の発売を記念して早速行われた俺×俺の脳内対談を書き起こした設定で、今回は趣向を変えた会話体でお送りいたします。

この彼女はフィクションです。(4) <完> (少年マガジンコミックス)

この彼女はフィクションです。(4) <完> (少年マガジンコミックス)


「それじゃこのカノの話だけど……」
「あ?」
「いや、『この彼女はフィクションです。』の」
「ああ、かのフィクね。かのフィクの話ね」
「まぁ、なんでもいいですけど」
「このカノってフォトカノと紛らわしい」
「それ発売日未定……」
「彼女がフィクションなんだから、かのフィクがいいんでない?」
「でない?と言われても」
「このカノって略す人、マクドナルドをマックって略しそう」
「絶対そっちのが多数派だろ」


「さて、かのフィク。早速ですが総評は?」
「今年の少年誌ラブコメにおける傑作」
「ぶっちゃけ面白いけどそこまで?って人のが多いよね。そのへんは?」
「お前らが間違ってる」
「おい」
「個人的には元々エロに偏ったタイプのラブコメがどうもだめで。俺がリアルタイムに見て来た少年誌ラブコメってエロくて女の子いっぱい出てくるようなのが主流で、だからかのフィクは新鮮さがあったのかなーと」
「でも叶恭弘は好きじゃなかった?」
叶恭弘はいいじゃない!」
「……まぁ、『針栖川』は面白い」
「『針栖川』はかなり好みなんだけど最近の展開よりはもっとgdgdしてほしかったかな。むしろ今は『ニセコイ』に可能性を感じる」
「『ダブルアーツ』の人のジャンプ新連載ね」
「正直『ダブルアーツ』はあんまりだったんだけど」
「絵柄も変わったね。どことなく少女漫画のような」
「そう!みんな王道とかテンプレとか言うけど、あれ花とゆめっぽいよね!家がヤクザだとか」
「白泉男子ねらってるね」
「強制的に組まされたパートナーと真の絆が生まれるって流れはそのままオチモノ系にも当てはまるし、根本の部分では偽のヒーローが本当のヒーローになる展開とかパートナーバトルとか疑似家族ものとかとも同じじゃないかな?そういう意味では確かに王道だと思う。王道を丁寧にってのは好きだし期待してるわ」
「王道と言えばかのフィクか」
「そこで戻したか。え、かのフィク王道?」
「王道というか正統派?主流と正統派は別と考えれば後者になると思う。三角関係ものでは非常によくできてまとまったし、イロモノ扱いも受けたけど中身は純ラブコメのはず。さっきの文脈で言うと一方的にユーリ→ミチルに好意が向かう関係が、具現化され逆方向になって、そこから改めて関係を構築して行く流れとまとめられるかな」

  • 途中の中弛み?

「単行本では二巻あたりからちらほら言われてた中弛みについては?」
「俺としてはもっと長期連載になると思っていたんで、早い内に文芸部のメンバーを深掘りしてほしいという気持ちはあったかな。その後で市民祭演劇に行けばうまいこと盛り上がったろうし。そこで群像劇的に動かなかったことへの不満は当時あった。ただ結果として作品が短くまとまったしその中で三人の関係に終始したということで結果的には問題なかったかな」
「あ、それとよく単行本でまとめて読むと雑誌で悪いと思ってたところも気にならなく〜みたいなロジックあるじゃん?」
「あるね」
「あれって雑誌で感じるマンネリと単行本で感じるマンネリが違うってことでないかと」
「と言うと?」
「雑誌で感じるマンネリってだいたいは一話毎の展開が進まないってことじゃん?それが単行本の場合はもう少し広げてパッケージされた内容にまとまりがないって意味だと思うのよね」
「んー、よく分からない」
「かのフィクで言うなら当時マンネリと言われることもあった二巻あたりって一話一話だと確かに進展は見えにくいけど最終13話でフーコ先輩が恋に落ちるじゃん?そうすると読んだ側としては「ああ、二巻はフーコ先輩がマジかわいい話だったな」ってまとまるでしょ?そういう感じで巻毎の内容にまとまりがあるとそれまでの動きが見えやすいんでないかと」
「コナンとか金田一とかエピソードの中途半端なとこで切るのイラつくこと思い出した」
「その点かのフィクは巻毎のまとまりいいんだよね。サブタイつけるなら一巻「ミチル、襲来」。二巻「フーコ、来日」。三巻「めぐり合い、デルタ」じゃん?」
「最後もエヴァで行けたと思うけどなー」

  • キャラクター

「フーコ先輩人気はどう?間違いなくミチルより人気だったよね。」
判官びいきとか愛されるより愛したいとかも理由だろうけど、ミチルが幼いってのも理由かなー」
スクラン小林尽が「男はバカっぽい子が好きと言うけど本当にバカな子は嫌いらしい」みたいなこと言ってたあれね」
「そうそう。ミチルも天満と同じく天真爛漫設定だからね。「女子高生なんて子どもじゃん。付き合えないわー」みたいなこと言うやついるでしょ?根本的にはああいう問題かなーとね」
「女性の方が精神的成長は早いと言われるけど、高一くらいならミチル程度の幼さは普通じゃない?(危険さはともかく)むしろ一つ上とは言えフーコ先輩が大人って感じが」
「へー、お前そんなに語れるほど女子高生と関わりあるの?」
「…………ないです」
「ん?」
「ないです!!」
「よろしい」


「つーか俺のポジション的に言いにくいけどフーコ先輩好きなのね」
なーんて☆ねっ!だけで記事書いたしな
「あ、でもその次の時計置いてく話(3巻21話)。あっちのが衝撃だった」
「ああいう気持ち、感覚としては分かるけどあれを漫画で一話とるのは初めて見たような。すげー初々しいし」
「時計ってチョイスがまた。もっと女の子っぽいもの置いて行けばいいじゃないとか」
「ミチルの下着・制服・歯ブラシと比べて何のセクシャルな想起もないからね、腕時計」
「本当はネックレスか何か置いてきたかったんだけど、「これはさすがに……」みたいな葛藤があって腕時計にしたとか考えてくと、腕時計の無難さが逆にやばい」
「そ、そこまで考えてたの……?」
「イメージが何より大事だってヴァンガードで言ってた。あと海で「いい人」って言うのもすごいよね(4巻27話)。よりによってそれを選ぶかっていう」
「なーんて☆ねっ!もそうだけどフーコ先輩の不慣れなこと押し通して自爆は本当やばいよな。普段は冷静そうにふるまってるけどアクデントに弱くてそのギャップが」
「そのへん感情がたかぶると発言が熟語のみになってしまうクセという設定が象徴的だよな。ただの恥ずかしがりじゃなくて性格的に裏打ちされて焦るとこで焦ってるのがリアリティある」
「ミチルに比べるとスタイルが……くらいであまり女の子らしくないキャラにされなかったのもよかったと思う。私服もちゃんとオシャレだったし」
「ああ、こういう先輩いそうだわーとか」
「いないけどね」
「フィクションか」
そういや前にフーコ先輩もフィクション説あったよね?
「フーコ先輩のセリフに区点がついてるってあれな。ただ厳密にはフーコ先輩だけってわけじゃないしせいぜい一応用意してた伏線で結局捨てたくらいかね」
「フーコ先輩にしろ毎回区点つけてはないしね」
「ここだけの話、かのフィク最終話は実は全員フィクションだオリエント急行オチだと思ってた」
「ほぼ夢オチじゃねーか」

  • 打ち切り騒動

「打ち切り騒動についてはどう思った?」
「あれに関しては色んな文脈があるけど、単純に漫画の内容に絞って語るか。リアルタイム感想としては演劇編のラストではまだ続くと言っててもう少し広げようとしたら急に収束したって感じ。単純に驚いた」
「チャンピオンの『ケルベロス』ほどではないけどわりと急だった感じはしたな。」
「俺は面白かったし客観的にこれはまずいという視点もなかったんで。というか本当のところ何が問題だったのかまだ腑に落ちてない」
「何人かの話を聞いたところ、始めから言われてたように今のマガジンっぽくないのが原因かと」
「うーむ。でもかのフィクが出たときマガジンっぽくないと言う人がいる一方でマガジンっぽいと言う人もいたんだよね」
「前者は赤松・瀬尾のハーレムラブコメを指してマガジンっぽいと言ってたんだろうね。後者はそれ以前か他の流れ、もしくはラブコメとは別の漫画と比べてたのかも」
「どちらにせよ今のマガジンのラブコメを好んで読む層には受けなかったということ?」
「さっきのマンネリ騒動の話じゃないけど、ラブコメに限らず週刊誌的には展開のメリハリが好まれるからね。その点かのフィクは昼ドラ的というか劇的な展開や引きはなかったかな」
「『GE』『君のいる町』と比べると確かに」
「ただ打ち切りは裏の事情だからそれを作品の善し悪しと直に結び付けるのはナンセンス。俺は一つの作品として見たときにかのフィクは面白かったんでいいかなと。元々二十巻三十巻も長引かせるタイプではなかったんで、経緯はともかく内容には満足している」
「つーか、かのフィク終わってから急にマガジン落ちたからね。同じ頃一気に上がってたサンデーに抜かれた感が」
「それはベビステの試合が終わったりAKBが土木工事始めたりタイミングの重なりが問題だろ。ま、今のサンデー面白いには同意」
「今年の新連載が好調だよな。『マギ』が中堅どこに入って下に面白いのがどんどん追加された感じ。まだヒロインに黒髪ロングが少なかったりサンデー推しのブロガーがアレだったりはあるけど」
「後者はもちろん前者もあんまり関係ないような」


「サンデーで思い出した。神のみとかのフィク比べる話あったよね?」
「これ(Togetter - 神のみ、このカノ、バクマンに見る「理想」と「現実」の物語)な。まぁ、これについてはさすがに個別エントリ設けるよ。ちょうど神のみ読み返したし」
「ちなみに神のみヒロインズで好みの子とかいます?」
「黒ロンはなべて好きと前置した上で、七香
「あら意外」
「あの子ってバックグラウンドが何も明かされてないじゃん。たぶん大したことないんだよね。つーか大して気にしてないのね。将棋が何かの代わりでもないし将棋を阻むほどの要因もできないし、ただ勝ちたいだけっていう。ああいうさばっとした自由人はいいよね」
「水星Cね」

  • ラストの急展開

「ラストの急展開で隕石(笑)みたいな反応もあったけどそれはどう思った?」
「その前から細部の矛盾を突く指摘はちらほら見てて、それにも同じこと思ってたんだけど、かのフィクの場合は強制力という概念で力技説明つけるからそのへんあれこれ言ってもあんまり意味ないかなーと」
「それにしても唐突さに加えてスケールのでかさはいきなり感あったけどな。それまでがせいぜい文芸部内の事件に収まってただけに」
「そこらへんは段階を踏む余裕がなかったということで。周りに認知されたキャラクターであるアムの登場を考えると少なくとも街レベルに広げる構想はあったんじゃないかね」
「そう考えるとアムが不憫だな」
「一度も表紙に出てないしね」
「あ、ほんとだ。ミチル3/4なのに」
「構成要素がミチルはノート99冊でアムは1冊だからなー」
「その理屈は違う」

  • ユーリ・ミチル・文芸部

「今のユーリは誠実でいい子だよね」
「過去のトラウマが始めにあって、それを回収する4巻の展開はよかった」
「あのトラウマがあったからミチルが生まれ、そこから立ち直ったのがフーコ先輩のおかげだから全て繋がってるんだよね」
「創作は逃避の手段であったユーリが改めて創作を目的とし向き合うラスト。ユーリは創作者になったってとこかな。前はキャラクターしか描いてなかったし」
「そこには部員みんなの協力もあって、新たなミチルは前のミチルとは違うという指摘もあったね」
「ラストは作ったという結果だけじゃなくて創作過程が見えるのがいいね。みんなでユーリとミチルのための物語を創ろうって姿勢が見えるのが」
「最後のページでユーリの自画像に美化しすぎってツッコミがあるのとか部内の空気を感じる」
「『君に届け』や『ストロボエッジ』には主人公が自分の気持ちに気づいて男の子のところに走り出すシーンがあって、これが最大の盛り上がりなんだけど、そこで友達が背中を押してる(比喩)のがすごく気に入っていて。そういう全員で主役の幸せを願う恋愛もののよさがかのフィク最終話にはあったんじゃないかと」

  • ミチルとの別れ

「演劇編でミチルが成長段階を経てるからさ、別れのシーンで人を想えるようになってるのが泣けるのね」
「創作者の責任についてはまさに打ち切り騒動と重なったせいで変な文脈も読んでしまいそう」
「ところで目からビームって意外と使ったよね?」
「実は毎巻使ってるね。出オチっぽかったのに」
「あと消えかかってるミチルがヘブンズドアーっぽい」
「それはけっこう皆さん思ってるよな」

  • 最終的なユーリの選択

「ユーリ好きなやつころころ変わり過ぎみたいに言う人もいただろうね」
「元はずっとミチルが好きだったのが、現実化前には既にフーコ先輩が好きで。そこに至るエピソードがそもそもミチルを生み出す原因であった過去のトラウマに通じるというのは、ここまでは自然な流れだよね。最後にミチルを選んだのは、元々ずっとミチルが好きだったというのが一点。あの場あのタイミングの発言だったというのが一点でおかしかないと思うけどね」
「ん、プラトニックな方向へは行かないと思ってる?」
「近くに美人の先輩がいるのに我慢できるわけないじゃんみたいな現実的な見方ともまた違って、別に生涯一人に捧げなくてもいいんじゃないくらいの軽い気持ちで」
「あー、そういや少女漫画の何年後ラストで結婚させるやり方ってあんまり好きじゃないね。その後付き合ったり別れたりあっていいじゃんみたいな」
「俺の勝手な考えだけどユーリは文芸部同期の誰かと付き合うんじゃない?」
「フーコ先輩でもないのかよ」
「あまりに近くで二人も美人を見たせいで今度は普通の子に惹かれるとか何とか。小牧あたりフーコ先輩好きだったのが無意識にユーリに移るっての、すごくありそうじゃん?」
「それはそれでフィクションくさいなー」
「まぁ、フィクションですし」


「ユーリとミチルって、好き合って違う世界で生きることを選んだ二人の物語っぽいんだよね。ローマの休日とか。ああいうのってプラトニックなその後を想像する人もいれば違う人もいるもので」
「その意味で作品自体を閉じたけど可能性は開かれているってバランスはいいな。メビウスの輪みたいに完全に閉じられちゃうと窮屈で。『外天楼』とかあそこまで繋げなくてもって思ったし」
「あれはそういう窮屈さと後味の悪さが合わさって一つの作品だからなー」
「そうなんだけどねー。根がテキトーだからもっとテキトーでいいじゃんつーか」


「あと何か話すことあったっけ?」
「おまけ漫画は、内容は言えないんでおまけ漫画ありますとしか。それくらいかね」
「しかし会話体楽だなー。これ6000字あるよ」
「そんなに!?個別エントリでまとめられただろ。なんで会話体にしたの?」
冬コミ原稿の片手間で気楽に書いてたらこうなった」
「そっち先やれよ」