いつか隕石が落ちてくる日まで、逃げ続けて

○月×日 今日も朝から蒸し暑く会社はいつも通りの場所にある。隕石はおろか雨も降ってはこない。暑い。


 最大多数の最大幸福をうたうなら隕石が落ちて会社がなくなればいい。そんなことを言うからには自分だけは助かるつもりだなんて、そんな甘い覚悟ではないよ。俺が会社にいるときでいい。何かやらかして上司に呼び出されたときでいい。昼休憩が終わる一分前でいい。どこか隕石が落ちてきて会社と一緒に潰れ死ぬならそれでいい。隕石とはカスガイである。俺と会社と、犬猿の仲の間を持つ。

 そんなこんなを考えていて、七月にもなって同期でただ一人、定例の「学生の内はそれでよかったかもしれないけど~」のお言葉を受ける。

 人生をRPGに例えるなら低レベル低資金のままラスダン・社会に飛び出てしまったのが今の俺だ。一緒にパーティーを組んでいる会社の仲間内では一番低レベルに違いなく、しっかりと経験値を積んできた周りの奴らが理解しがたい。ここでレベル上げを怠った俺を責めるべきか得体の知れないラスダンを作ったメーカーを責めるべきか、その判断は後世の人に任せよう。さしあたり重要なのは、誰が悪かったかではなく今どうするかだ。

 俺の答えは簡単だ。逃げる。

 社会をダンジョンに例えたのはうまいもので、つまり必ず倒すべき敵、ボスではないということだ。抜け出せばいいただのダンジョン。いやもはや抜け出す必要もなく、そこに慣れればいいだけ。ダンジョンの住人、名前の無いキャラクターとして。出現率の高いモンスターから命を奪われない程度に。どこかの世界では大魔王からは逃げられないらしいが、社会というダンジョンでふらふら逃げ回り続けることはできるのではないか? 逃げているうちに状況だってなんだって変わるだろう。逃げているうちに素早さくらいは上がるだろう(FF2)。踊り続けろ水曜日。

つまり、誰かがもしなんかの問題にぶつかったら、とにかくまずそれから逃げてみること、特にそれが重要な問題であると思われれば思われるほど秘術をつくして逃げまくってみること、そしてもし逃げきれればそれは結局どうでもよかった問題なのであり、それは逃げまくる力と比例して増えてくるはずで、つまり、逆にどんな問題にとっつかまってジタバタするかでそいつの力は決ってくる、だから逃げて逃げて逃げまくれ、そうして、それでもどうしても逃げきれない問題があったらそれこそ諸兄の問題で……。そうだ、でもそうしたらどうするのだろう?
庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』)

 そうしたらそのとき考えるよ。