KILL TEL

 おそらく多くの職場がそうであるように我が職場にもしばしば電話がかかってきて、それをとるのはもちろん新人である俺の役目だ………もちろん?

 取りたいやつが取れよ。


  • 電話とりたくない日記

 昔その昔に親の人と住んでいたことがあるのだが、思えば俺はその頃から電話を取らなかった。携帯電話を持つようになったのも周りより遅かったし、持つようになっても電話には出ない。今も自分から電話をかける前には「電話していいですか?」とメールすることにしている。

 電話の嫌なところはリアルタイムレスポンスを強要されるところだ。

 メールやツイッターであれば、自分がその気になるまで返信を放置できて、相手はその間こちらが不在or忙しかったと好意的な解釈をしてくれる。

 電話はこれができない。相手は万全の状態で誰に何の用があるかも判ってかけてくるのに、受け手にとっては不意打ちだ。この非対称性はずるい。携帯電話なら相手の番号が表示されるから、落ち着いてから取ればある程度対等に近くなるが、会社の電話は相手が誰かも分からず、しかも速く取ることを強要されている。これではまともな対応などできるはずもない。音声だけだからメールのように反復して読み返すこともできなければ、表情や目線から相手の考えを読むこともできない。いざとなったら土下座すれば誠意が伝わると思っても、電話ではそもそも土下座が伝わらない。

 誰かにかかってきた電話を他の誰かが受けろというのは、個を消して自動応対機であれということで、先に挙げた電話の特性を鑑みれば「常時緊張状態を持続せよ」「社会人キャラがぶれないように」といった会社の空気は相当度この電話機の制作物ということになる。実際何もしなくても自分の席から離れるだけで少し気が楽になる。なんなら自分の席と言わず会社から離れてスーツも脱いで仕事もしなければずっと気が楽になる。そうかお前が犯人か。

 全ての電話機を壊してしまえば、少しは会社も楽になるのではないか? あるいは電話線を切り、クローズドサークルと化して。うろたえる同僚。死亡フラグを立てる上司(「こんな会社に居られるか!」)。そのときは俺が名探偵だ。