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黒髪ロング同士の百合可能性

「黒髪ロング同士のカップリングといえば百合作品全体としては少なくないはずだがなぜメインストリームへの採用は稀なんだ? キャラクターのバラエティー?画面映え? いややはり受け攻めを第三者に伝える上で髪の色や髪型でわかりやすく表現する必要があるのだろうか」(倉田嘘『百合男子』第8話 – コミック百合姫2012年3月号掲載)


 そこに気づくとは……やはり百合ーダー。


 自分としてはキャラクターの判別という点が大きいかなと思うので、以下それにしたがって考えていきます。まずフィクション・キャラクターの髪色・髪型は現実以上に自由で、かつ受け手がパッと見でキャラクターの判別ができた方が好ましいので、カップリングに限らずメインキャラクターに黒髪ロングが複数採用されるケースは稀です。また黒髪ロングはそれに付随するイメージが強すぎるというのも、複数出しにくい一因であるかと思われます(関連:黒髪ロングの文化史 〜平安貴族から萌え時代まで〜 - 水星さん家)。さらにカップリングとなると二人の距離が近い描写も多いわけで、キャラクターの判別という要素はより重要度を増してしまいます。

 とはいえ世の中多くの作品があるわけで、黒髪ロング同士の百合、無いわけではありません。あります。


ふたりとふたり (IDコミックス 百合姫コミックス)

ふたりとふたり (IDコミックス 百合姫コミックス)


 吉富昭仁『ふたりとふたり』は2組×2の百合漫画ですが、なんと全員が黒髪で内訳もロング3(うち三つ編み1)・ショート1です。他作品のような明確なキャラクターの差異はありませんが、目の描き方や前髪の違いから容易に判別につながります。全員が黒髪だから、例えばA(茶ショート)とB(黒ロン)の判別は明らかなのに、それに比べてB(黒ロン)とC(黒ロン)の判別はあいまいという、区別の差が大きく生じません。要するにみんな黒髪にすればいいのでは?という解決です。

 また『ふたりとふたり』では至極自然に性描写が入るのですが、ロングと三つ編みのカップリングでは三つ編みの娘が髪を解いた上でのセックスシーンがあり、判別がつきにくいことを逆手に取った、二人が溶け合っていくかのような描写が見られます。

 黒髪ロング同士の百合における、判別がつきにくいことを逆手に取るやり方は他作品でも見られます。吉富先生はマンガ・エロティクス・エフvol.73で『あしたのあたし』という連載を始めましたが、ここで描かれる黒髪ロング同士の百合は、明日の自分と今の自分という判別がつかなくて当然な2人です。「同一人物」を出すことで黒髪ロングキャラクターの判別のつきにくさを逆手に取るやり方は、つばな『見かけの二重星』などにも見られます。


見かけの二重星 (KCデラックス)

見かけの二重星 (KCデラックス)


 百合ではありませんがこの文脈で押さえておきたい漫画が、夢乃むえ『さえもえな日常』。


さえもえな日常 (リュウコミックス)

さえもえな日常 (リュウコミックス)


 表紙の2人は双子です。見ての通り双子だから似ているのは当然で、しかし2人の判別は明らかです。ですがその判別はメガネという着脱可能なものに依るために、ストーリー上の都合などでそれを失くすこともまた容易にできます。つまり判別が容易であり困難であることを使い分けられるという可能性を感じます。
 『さえもえな日常』ではまだそういう使い分けは見られませんが、はじめに言ったようにメインキャラクターに黒髪ロングが複数採用されるケースは稀な以上、判別のつきにくいさを当然に取り入れることができる&黒ロン2人で倍おいしい双子の設定はいいですね。


 まとめ。黒髪ロング同士のカップリングは主にキャラクターの判別がつきにくいことでまだマイナーに止まってはいるが、それを逆手にとったやり方に可能性はある。ので、もっと増えるといいな。