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『惑星のさみだれ』の思い出

 大学生活で鍋やパーティ、宅飲みの機会がそれなりにあったのだけれど、そんなときいつも思い出していたのは『惑星のさみだれ』のとある風景だった。


惑星のさみだれ 4 (ヤングキングコミックス)

惑星のさみだれ 4 (ヤングキングコミックス)


 『惑星のさみだれ』という漫画の4巻で、主人公・夕日は家に突然押しかけてきた仲間と呑み会になる。三日月という青年の持ってきた食材を使って太郎という少年の作った肉野菜炒めを食べ、夕日は美味いと涙を流す。全体のストーリーにおいては重要度の低いだろう日常の一幕だが、今も強く印象に残っているシーンだ。

 思えば『惑星のさみだれ』のやつらはそれぞれ孤独だった。さみだれは姉と二人暮らし、三日月は風来坊だし、南雲さんは家族と別居中無職。そして主人公の夕日は大学生で独り暮らし。そんな状況で誰かが家に押しかけてきて食事を共にするというのは、特にそういう機会が少ない者には、特別な意味があったと思う。

 ウソのように料理が上手い人が居合わせたわけではなく、ただ持ちよせた肉が良いものだったからうまくなったというのも、とても「らしい」し、続く夕日の「グラム40円の鶏ムネ肉以外の肉久々に食べた…」というセリフも貧しい大学生の生活感があった。

 『惑星のさみだれ』はまだ大きなストーリーが動き出す前、というか初めて見たときから不思議なほど気に入ってしまった漫画だが、今振り返るとこういう何気ない日常の積み重ねに、ぼくは本当に感じ入っていたのかもしれない。