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『JORGE JOESTAR』はfrom 舞城 to 荒木のファンレター

 from 舞城 to 荒木のファンレターだからどっちのファンが読んでも面白い……と感じるかどうかは置いといて現象としては面白いよねということを言いたかったのだよ(追記)



上遠野:そうなってくると、この後作品を書かれる舞城王太郎先生の題材が気になりますね。この前ちょっと小耳に挟みましたが…。
西尾:僕もちらっと聞きました。凄いところに目をつけてくるなぁ!…と思いました。この場では言えませんが。
ウルトラジャンプ2011年12月号付録小冊子「VS JOJO マニアクス」より)


 三名の人気作家によるジョジョのノベライズ企画「VS JOJO」。そのトリを務めるのが舞城王太郎ということで昨年の上遠野・西尾対談では上のように言われていた。

 それから一年近くが経ち、ついに発売された舞城王太郎JORGE JOESTAR』はなんと768ページの長編。それは時間かかるわ。そして舞城が主人公に選んだのはタイトル通りJORGE JOESTAR、第一部ジョナサン・ジョースターの子にして第二部ジョセフの父に当たる。


JORGE JOESTAR

JORGE JOESTAR


 その『JORGE JOESTAR』を読み終えて。twitterで感想検索していると「JOJOファンが読んだら怒る」「舞城知らない人は読んじゃダメ」などと変な文脈読んじゃった意見を見かけて俺は悲しい。

 やー読ませろよ。怒らせてなんぼだろ。


 かつて初音ミクで知られるKEIの表紙絵にだまされて『ディスコ探偵水曜日』買ったみたいな事故が大規模に起きている。


ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)

ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)


 ディスコもまた舞城の前作のキャラクターが登場しているなどで「これから読んではダメ」という意見をよく見かけた。でもそんな作業ゲーみたいなことやらせて誰がやるんだよと俺は思ったし実際ディスコを舞城知らない人にすすめてディスコから読ませたことも何度もある。その全てが成功したわけではないが、まあわかるやつは勝手にわかるし逆も然りだ。


 「VS JOJO」第一弾・上遠野『恥知らずのパープルヘイズ』が点と点を線でつなげる、原作に忠実な二次創作であった。多くのファンが気になっていたフーゴの話を補完するストーリー。原作のセリフやシーンをそのまま忠実に引用して使ったから超楽だったと上遠野先生言っている。だがそんな安心の信頼の実績ものばっかでこの企画いいのか? 対して舞城は壊し、創る。


 だからこの本が「JORGE JOESTAR」のタイトルで「彼が英空軍パイロットになるまでの数奇な物語」というのは堂々と詐欺なのだが、その程度ではない。これは『ジョジョの奇妙な冒険』を基にした『ディスコ探偵水曜日』なのだ。ディスコにおける「運命と意志の相互作用」が『JORGE JOESTAR』で「ビヨンドと意志」になっているのは本作が二次創作だからで、そういうフィクションに対するフィクションのメタ世界だから九十九十九がまずリードする。

 この九十九十九だって清涼院流水のキャラクターなのだから、舞城は本当に他人の作品を自分の世界観に取り込むのが巧い。これくらいやってこそ「VS」 JOJOだ。原作ファンを怒らせないような二次創作であってはならない。『Fate/stay night』から 『Fate/Zero』が生まれたように、『ジョジョの奇妙な冒険』から『JORGE JOESTAR』が生まれたのだ。


 ただそれとは関係のないところで『JORGE JOESTAR』はやはり舞城ファンに向いてるかなあと、俺は思ってしまう。

 19日発売の予定の『JORGE JOESTAR』がすでに店頭に並んでいると知り、土曜の開店即買いに出かけた俺を待っていたのは舞城王太郎から荒木飛呂彦へのファンレター小説であった。

 表紙や挿絵のイラストで二人がコラボし(舞城は自分で絵も描く)冒頭に「荒木飛呂彦先生へ。」と置いているのを見て、俺は泣きそうになった。だって章題を見れば「九十九十九」「西暁町」と好き放題やってるのがわかるし「JOJOファンが読んだら怒る」的な反応が起こるのは読む前から予想がついていた。それが舞城なりのファンレターなのだ。泣ける。本作において舞城は荒木飛呂彦またJOJOに対し何のコメントもない。何のコメントもないがこれは舞城うれしかったろうよ。こんなたいそうなコラボしちゃってまー。

 その印象は読み終えて一日以上経った今も拭えない。いやディスコと同様ただのJOJOファンでも充分はまる。でもfrom舞城to荒木のファンレターを読む面白さというのはやはりファン独自の感覚ではないかと、そう思ってしまったのだ。まあこれで泣いたとかファンレターとか言ってるの俺くらいなんだけど。


 でもでも『JORGE JOESTAR』は舞城知らないJOJOファンでも全然読めるし舞城ファンはこれを読むためにJOJO読むくらいでもいい。リサリサ黒ロンだしね! 「大丈夫だよ。女の子ずっとやってるからスカートの中身見せない技術くらい身につけてます」←かわいい


 そして本作に出てきてもいない水星Cの話をしよ。そのうち九十九十九の役は水星Cでよかったのではと言う人が出てきそうだが、逆で水星Cが出てこなかったのは本当に良かった。だって水星Cは調布の和菓子職人だから。探偵神ではないのだから。
 本作における水星Cの役回り九十九十九……ではなくあの御方が受けておられて、「水星Cさん格高!」というのが読了後第一声であったよ。『JORGE JOESTAR』で舞城を知った人は『ディスコ探偵水曜日』を読めばいいことあるぞ!