今週の黒ロン:『ウィッチクラフトワークス』

 『ウィッチクラフトワークス』においては黒ロンの地位が高い。


ウィッチクラフトワークス(1) (アフタヌーンKC)

ウィッチクラフトワークス(1) (アフタヌーンKC)


 火々里綾香(かがり・あやか)さんは通う高校で「姫様」と呼ばれるほどの有名人。毎日多人数に囲まれて登校し、親衛隊までができている。しかも後に判明することだが、この「姫」というのは学校における公的な地位で、火々里さんは理事長に次ぐ実質的な権力者なのだ。

 そんな火々里さんは実は「工房の魔女」という町の秩序を守る魔女で、世界の混乱を企てる「塔の魔女」と戦っている。その「塔の魔女」の目的はどうやら主人公・多華宮くんの持つ力で、必然的に多華宮くんは火々里さんに守られる形となっている。


 平々凡々な男子が急に戦闘に巻き込まれ、高い能力を持つ女子に守られるという話はもはや一つのパターンだが、たいていの場合そのケースでは始めは互いをよく知らなかった二人が、ぶつかり合う中で徐々にその仲を進展していく。

 本作においてはそこが大きく違って、火々里さんは始めから多華宮くんを溺愛していて、そこに揺るぎはない。火々里さんにとっては多華宮くんが「お姫様」なのだ。学校一の黒ロン美人から惜しみない愛を受ける。その信じられない状況で、多華宮くんはまず火々里さんを信じるところから始める。

 また火々里さんが守るのは「多華宮くんの日常」であり、本作は多くのバトルもののように日常と切り離された非日常の世界に舞台を移さず、あくまで日常の中に割り込む異常として「塔の魔女」との戦いという非日常がある。

 戦いが激化しても徹底して多華宮くんの勉強や学校生活を優先させる火々里さんの姿勢はそれを象徴しており、本作はこんなにも魔女との戦闘描写が占めているにも関わらず、どうしてラブコメディな印象が強い。

 とは言え何より素晴らしいのは火々里さんのキャラクターだろう。火々里さんの一挙一動に歓声が上がり後ろに花が咲く。細い釣り目でクールな火々里さんが多華宮くんを過保護に溺愛するというそのギャップ。
 高校男子として決して背が高いとは言えない多華宮くんだが、それにしても頭一つ分は優に超える長身。にしてさらにスカートまで届くロングストレート黒髪(背が高いと髪も長い!)。

 二人が並んで通学する姿は、まさに「近くて遠い」黒髪ロングという存在を象徴するかのようである。「かわいい」より「きれい」の合う美人系の黒ロンを好む派閥としてはぜひ押さえておきたい漫画だろう。
 「火々里さんの髪は……言わば神が与え給うた奇跡」(原文ママ)なのだ。