今週の黒ロン:『千と万』


黒ロンに土下座する漫画は名作。



 関谷あさみ先生は今は亡き「つぼみ」で何度か見かけて気になっていたのですが、初の一般向け単行本が出たようですね。



 『千と万』は父・千広と中学1年生の娘・詩万の日常ストーリー。家族ものの漫画は(特に疑似家族ものは)ここ数年至る所で見かけますが、だいたいのものは子どもが小学生であったりそれ以下であったりするのに対し、『千と万』の詩万は中学1年生。この年頃の子を年相応に描いた漫画です。

 中学生日記なんかがそうですが、中学生くらいになると何でもかんでも口に出してしまう子ども像はなくなり、少しずつ悩みが明確になってきます。

 詩万も日常いろいろ嫌なことや許せないことがあって、でもそれがただのわがままに終わらず、なぜ嫌なのかも自分で判っています。特にそれがはっきりしているのが第7話・第8話の2話にわたる、父・千広がブログに自分のことを書いているのを知った詩万が怒るというエピソード。怒る詩万に対し千広が「詩万が怒るからもう書かない」というふうに言うと、「そうじゃないから。私がやだって言ったこと本っ当にちゃんと分かってる?」と嫌な理由までも分かろうとしない千広に詩万はまたも怒ります。詩万がちゃんと自分で考え良い悪いを判断しているということを知った千広は詩万に土下座するのでした(冒頭)。

 こういう例を出すと詩万が年不相応に大人びた子に思われるかもしれませんが、この後の話では不慣れでこわい電話注文をなんとかこなす話や父の日のプレゼントに悩む話などもあり、「ダメな父親としっかり者の娘」というふうに記号化されたコメディの型になっていないところがこの漫画のポイント。

 第10話では詩万がその人に感じている好感度が頭の上に見えるという表現がされており、好き嫌いのはっきりした子どもというのがよく分かります。ストーリーはその好感度のハートマークが0になったまま父の日が来てしまって……というこれまたおもしろい。


 人は黒ロンに生まれるのではなく、黒ロンになるものです。詩万ちゃんにもこのままよい黒ロンに育ってほしいな。
 と、心も体も黒ロンも日々成長中の詩万ちゃんを見守る良い黒ロン漫画です。