今週の黒ロン:『流浪刑のクロニコ』

 知人の本なので買ってきました。乙一推薦で遠藤達哉イラストとはすげえ。


流浪刑のクロニコ (JUMP j BOOKS)

流浪刑のクロニコ (JUMP j BOOKS)

永遠に世界をさまよう刑罰“流浪刑”を科せられた少年・クロニコ。彼は無数の世界で、様々な人々と出会う…。


 流浪刑。刑、刑罰という印象から、はじめはクロニコが流浪の刑罰から逃れようとする話かと思いました。ですが、これはむしろ「逃れられないものにどう向き合うか?」という話なのが、次第に分かってきます。


 「刑」とは著者の言葉を借りるなら「何らかの理由で、自分の意志では逃れることのできないもの」です。
 この本には色々な「刑」の人物が現れます。それは刑の種類が色々というだけでなく、それとの向き合い方もまたそれぞれ異なります。

 例えば“観測刑”の少女は黒ロンなのですが“観測刑”の少女は黒ロンなのですが、彼女は与えられた定めに従って、忘れ去られた書物の観測をします。一生を図書窟で。しかしそれを知ったクロニコはこう言います。「――でも、それが本当に正しいのかな?」

 クロニコの指摘により自らの刑に疑念の生じた“観測刑”の少女ですが、それでも彼女は今までの生活を変えられず、なかなか進むことができません。ここで“観測刑”の少女は、刑に忠実と言うよりは刑を守ってきた今までに忠実な人物として描かれます。

 他にも信じて進んできた道が突然崩れてしまう“積石刑”や、手段が目的化してしまう“防衛刑”など様々な刑の人物が現れ、またクロニコの流浪刑を「homeを失った」と読み替えると、タイムリーな読み方としては東日本大震災後に表面化した様々な問題を見ることもできます。


 世の中完全に自分の力でどうこうできる問題ばかりではありませんし、できない問題ばかりです。でもできないそれらが全て自分の刑かと言えばそんなこともない。ブラック企業はやめればいいし会社は休めばいいし残業はしなければいい。もちろんそれが本当に無理な人もいますが。

 とりあえず自分には刑の刻印などありませんし、この本に出てくる人物以上に自分の「刑」を理解できてなさそうです。おそらく自分に限らず、刑との向き合い方以前にそのへんがあいまいな人は多いでしょうが、そういった区別をつけること。それだけでもけっこう大きく変わりそうだなと思いました。


 まあ、そのへんは余談なんですが。久し振りにいいファンタジーを読みました。「移り移ろい、再び巡り、また移ろう」という言葉も好き。なんとなく『星の王子様』で王子が地球に来る前色々な星を巡るあたりを想い出しましたね。