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今週の黒ロン:『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』


 『ふたりはミルキィホームズ』も始まったことだしミステリが読みたい!でも黒ロンも見たい!……ということで『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』。これは『扉は閉ざされたまま』から始まり『君の望む死に方』『彼女が追ってくる』と続く碓氷優佳シリーズの第四作にして過去エピソード。火山学者・碓氷優佳の高校時代を描く短編集です。

 「著者のことば」にもあるように内容的には単体でも楽しめるものですが、第一作『扉は閉ざされたまま』だけでも読んでおくとより面白いはず。これ自体めちゃくちゃすごいミステリなのでおすすめ。


扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)


 この碓氷優佳シリーズは犯人視点で進み偶然その場に居合わせた優佳により追い詰められていくサスペンス調の、言わゆる倒叙ミステリの形式ですが、どれも非常にミステリ的なギミックが練られ、単体で充分満足できる傑作です。

 加えてシリーズとしては碓氷優佳の恐るべき性質が発揮されるキャラクター小説的な楽しみ方も面白い。日本人形のような顔立ちとまっすぐな黒髪、年齢より幼い印象を受ける優佳が、些細な事象から即座にロジカルに犯人を追い詰める。しかも優佳が恐ろしいのは「事件」が起きる前から動き出すことで、巧みな話術で場をコントロールし他人を操って自分の思う通り事を進める。ある意味出会った時点で終わりのチート。


 という優佳の性質は犯人が追い詰められる中でしか語られなかったことですが、『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』は優佳の過去編ということで、よりキャラクター小説的な趣が強い。つまり黒ロンミステリです。

 『扉は閉ざされたまま』で明かされた優佳の性質を深堀する内容なので既読ならもちろん、未読ならセットで読みたい一作。黒ロンが全てを支配するという世の正しい構図が見られます。