『映画 謎解きはディナーのあとで』感想

 先週のこと。実は『風立ちぬ』の後『映画 謎解きはディナーのあとで』も観ていた。
 『風立ちぬ』は淡々とした上品な味わいがあって素直に良かったが、そういうものを観てしまうともっと体に悪いジャンクフードな予定調和を欲するもので、原作もドラマも全く未見にも関わらず数十秒の劇場広告でこれは間違いなく予定調和だと確信させてくれた『映画 謎解きはディナーのあとで』を観ることになった。「クビよクビ!」と言う北川景子さんもかわいかったし。

 『映画 謎解きはディナーのあとで』。ねーよ、これがやりたかっただけだろ展開のオンパレードだったのだけど、もう大満足で。ミルキィ的なてきとーミステリと完璧予定調和。そして見事にラブコメだった。

 映画館は女性と子どもだらけで最初驚いたけど、これも今ならよく分かる。麗子お嬢様のポジションって女性の理想な感じするのだ。自分でばりばり働いてて金には困らず身近に全力でサポートしてくれる男性もいる。しかし立てられたりちやほやされたりだけでもやはりダメで、疲れているときや自己嫌悪期にはほめられるのが逆効果ということだってある。時には対等な立場で「当たれる」相手が必要なのだ。だから景山は麗子が「クビクビ!」と当たってもかまわないようにあえてスキを作る。
 景山の毒舌が謎解きのときだけ現れるのはきっとそういうことで、お嬢様に解けていない謎が自分には解けているという正当性のあるときに限り、景山はあえて二人の関係を踏み越える。それすら麗子お嬢様のためなのだ。すごいできる執事。
 そして恋愛は同じ立場の者でしか発生しない説に則り、そうした事件の積み重ねが二人の関係を進展させる。今ちょうど読んでいる森博嗣のS&Mシリーズでは『詩的私的ジャック』あたりで萌絵が事件を犀川と関わるだけのものでしかなかったと認め、「もう事件のことなどどうでもよかった」と語る。そうしたラブコメ論理が事件・ミステリを凌駕している様を『謎解きはディナーのあとで』にも見ることができた。
 男探偵と女助手の組み合わせが、しばしば社会的にダメな男探偵と有能な美人の女助手になるのはやはり男性向けということなんだと思う。その点『謎解きはディナーのあとで』女性向けなとこが新鮮で、景山は優しいエリートだし特異なキャラクターになりがちな探偵のその特異さがお嬢様のためというラブコメっぷり。これメフィスト以降のミステリ形式を利用したキャラクター小説にしてすげえ女性向けラブコメじゃーんと自分でもびっくりするくらいおもしろくなってしまった。
 あと日本の若い男で執事って難しいと思うのだけど景山役の櫻井翔は悪くなかった。たしか育ちいい人だし少なくとも消去法なら正しいキャスト。麗子お嬢様役の北川景子さんはキャリアウーマン的なしっかりした普段からの「クビよクビ!」をどれだけかわいく言えるかが全てな気がするが、これもよかった。そこまで変わった難しい役柄ではないけど、だから自然なかわいさや共感を生むのかなと思う。
 最後に一番驚いたのが全くディナーシーンがなかったことで、タイトルから食事が謎解きに関係するディナー探偵だとばかり思っていたのでミルキィにオペラ要素がないくらいの衝撃を受けた(謎)。

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空夢ノート+ 劇場版 『謎解きはディナーのあとで』 の感想
 すごくいい感想でした。こういうの書けるようになりたい。