進撃の歩兵 (将棋):『the Killing Pawn』

 『進撃の巨人諫山創と『ARMS』皆川亮二が組んだ将棋漫画『the Killing Pawn』。今週の週刊少年マガジンに待望の掲載です。巻末コメントによれば「とても変な漫画」(皆川)、「実験漫画」(諌山)。

 『the Killing Pawn』に関しては事前予告で発表された「あんたを歩だけで倒してやる」という1コマから様々な憶測や期待がされていた。以下の記事が「いつもの皆川」がそろっててファンなら頷くイメージ。

ふと思ったのだけど、原作は諫山先生だし、そもそも将棋漫画だ。将棋の最中に命を狙われるなんてことは、普通はないよね…。
それでもいつもの皆川成分を期待してしまうんだよなあ。
諫山創×皆川亮二の「the Killing Pawn」が楽しみすぎて妄想が捗る - 日々のこと


 蓋を開けてみればその「いつもの皆川」要素はほとんど外しているのに将棋の最中に命を狙われてしまう普通でない漫画だった。そして皆川先生の超かっこいい戦闘描写をすべてギャグに使ってしまう贅沢な漫画でもあった。


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皆川フェード*1はあるので安心だ


 主人公の将棋をあまりにすんなり受け入れている観客を見るに、まじめに考えれば作中世界の将棋では「将棋関係で物理ダメージを与えるのはアリ、それによって相手が戦闘不能に陥った場合にも勝利」というルールがあり、今までもさんざ病院送りにしていたのに最後だけ警察が動いているのは二歩の時点ですでに負けで、そこから先は将棋ルールが適用されなかったといったところでしょうか。

 まーそんな設定はもちろんのこと、世界観や人物について全くと言っていいほど説明がない。

 主人公の背景もなんとなく説明はされているようで、「父親何者?」とか「母親今生きてるの?」とかもわからない。ラスボスが親父の因縁の相手という展開かと思いきやそんなこともなかったし。目的も「ビッグになる」とか「デカいことやる」とか見事にすかっすか。

 それら諸々を文字通り力押しするというギャグなわけで。説明がないと言うと若干ネガティブな印象を与えがちなので、むしろ説明を極限まで削り落としたことで結果、皆川先生のめちゃくちゃ巧いかっこいい描写を活かしたと言うべきか。

 皆川先生や皆川先生がこれまで組んできた原作者ならもっと細かに説明してしまうので、これが原作者・諌山創の効果でしょう。幼少からの皆川ファンとしてはうれしく、こういうやり方もあるのかーと感心でした。

 単行本化のタイミングとしては、同じ講談社で連載している『ADAMAS』が終局に入っているので、その完結巻になりそうかな。


ADAMAS(10) (イブニングKC)

ADAMAS(10) (イブニングKC)


 ところで皆川フェードについて自分以外のまとめが未だにないのでそろそろ現代用語の基礎知識にでものっけてください。「皆川フェード」について - 水星さん家


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おまけ:他作品における皆川フェードの例(『日々蝶々』1巻)

*1:人物を背景に溶け込ませるように映像的な場面転換を為す皆川先生お得意の場面転換技術