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今週の黒ロン:『双星の陰陽師』

 21世紀の今日もはや日本の伝統とも言える、空から降ってきた女子と許嫁(共同生活)展開だが、実はもっと日本の伝統である黒ロンとは相性が悪い。

 それは前者がとてつもなくファンタジーな展開であり、そうした文脈上やって来るヒロインが明らかに異の存在であることを示すため、ヒロインにはその異が一目で分かるような外見特徴を持たせがちだからだ。

 そう考えていくとこの2つを併せ持つ、つまり空から降ってきた黒ロン女子と許嫁展開をきれいに守っている『双星の陰陽師』がすばらしい。


双星の陰陽師 1 (ジャンプコミックス)

双星の陰陽師 1 (ジャンプコミックス)


 著者は前作『貧乏神が!』の終了を前に、次回作は王道バトルにしようという話を担当としていたらしいが、ここで冒頭に挙げた問題、2つの伝統のアンマッチに気づいたにちがいない。仮にちがいあっても、著者がこのテンプレートな伝統展開にかなり意識的であることは確かで、これをやりたかった感がひしひし伝わってくる。

 特にどこの外国でも惑星でもない、日本国京都からやって来ただけのヒロインに、わざわざ空から降って来るという段を踏ませたことからもそれが分かる。



特別意味はないが空から降ってくるヒロイン化野紅緒


 ストーリーはかつて陰陽師として活躍していたが、ある事件をきっかけにそれを辞めた主人公が、京都の名家の陰陽師であるヒロインと出会い、2人は対立しながらも共闘し始める。考えの不一致からいがみ合っていた2者が戦闘という非常時に手を取り合い分かり合っていく過程。これまた王道である。

 バトルものは始め強くてかっこよかったヒロインが途中で主人公の成長に付いていけなくなる悲しい展開がしばしば待っているが、『双星の陰陽師』はタイトルからそうはならない安心感がある。

 さて肝心の黒ロンについてだが。前作とは一風変わって全体的に小さく可愛らしいキャラクターデザインにして、ヒロインは前髪ぱっつん黒ロン黒セーラーの最強装備。興味のあること以外は無関心でよく嫌悪感も露わにし、名家に生まれた陰陽師としてストイックで目的意識が強い。それ故に実力があるのにくすぶっている主人公を嫌い、全体的に小さく可愛らしいキャラクターデザインではあるが、主人公に対しては見下すような図が多い。強くてかっこいい黒ロンだ。

 一方で好物を食べたり不意を突かれたするときのあどけなさを"極たまに"見せるのが絶妙で、少しは隙がないととっつきにくいが、隙を作り過ぎると今度はそもそものイメージが崩れかねないバランスを巧く保っている。巻末に掲載された番外編が、ヒロインの私生活を見せることでその隙を作るおまけかと思いきや、ヒロインのbeforeを見せることで作品の奥行きを広げているのも面白い。『γ』といいジャンプSQにも黒ロン連載が増えて非常にいい傾向だ。