今週の黒ロン:『スピリットサークル』

 かつて『涼宮ハルヒの憂鬱』が流行ったとき皆が皆「ハルヒが黒ロンだったらなぁ」と思ったものだが、誤解を恐れずに言えばそのハルヒが黒ロンになったのが『スピリットサークル』だ。



 中二男子の桶屋風太はある日転校してきた黒ロン石神鉱子さんにいきなり殴られ「あと7回死んでもらうわよ」と宣告される(最高の導入だ)。石神さんが言うには彼女と風太は7度の過去生で殺し合ってきた間柄らしい。現世の記憶しか持たない風太は石神さんの「スピリットサークル」により自分の過去生を見ることになる。急に現れた女子の世界観をまるまる押し付けられるのはハルヒぽいが、しかし石神さんは黒ロンという大きな違いがある。


 『スピリットサークル』は幼い二人のラブコメと殺し合いの緊迫感が絶妙なバランスである。殺し合う二人のラブコメがうまく成立していると言ってもよい。
 過去生で風太に強い恨みがある石神さんからすれば、彼女は風太のことを嫌いでなければならなく、そのため風太が悪いやつであってほしい。だが現世の風太は友達想いのいいやつであり、過去生も自分から見たいと言い出す。それが石神さんはやりにくい。
 そんな石神さんが思い切り風太を責められるのが風太の中二な性欲から来る言動である(その多くは風太の意思によらないアクシデントである)。女の子として性的辱めを受けた(と感じた)石神さんは風太を悪者にし思い切り責められるのだが、このとき既に過去生がどうとか関係なし、石神さんは女子で風太は男子というそれだけになってしまう。



 つまりどう見てもただのラブコメになる。なのだが上の経緯を踏まえると石神さんがよりかわいく見るとのではないか?

 現世の記憶しか持たない風太に対し6度の過去生を見てから殺すという石神さんのやり方も、殺意はあるが今は殺さない理由づけになっているし、現世の二人が中二の男女であることから初々しいラブコメもできている。やはり『スピリットサークル』は殺し合う二人のラブコメがおもしろい。

 ところで著者の前作『惑星のさみだれ』では「こういう巻き込まれ系の話では相手に主導権を握られるからいけないんだよな」とメタ視点に主人公が自分のペースで動こうとするが、今作の主人公・風太は始めから思いっきり主導権を握られている。黒ロンに主導権を握られるのは中二男子の運命なのだ。

 そう、黒ロン。水上悟志先生の黒ロンだよ。俺はもう何年も前から水上悟志先生に黒ロンを描いてほしかったんだ……。それも黒ロン黒セーラーの美人転校生で過去生でも一緒で(しかも7度)毒舌で腰細くてシャフトっぽい上から目線ででもパンツ見られたら泣いちゃうなんて最強じゃないか。今や2000年代を代表するアニメの一つである『涼宮ハルヒ』ように、『スピリットサークル』も時代に残る黒ロン漫画になるはずだ(俺の中で)。