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『トクサツガガガ』の大人像がステキ

 丹羽庭『トクサツガガガ』をスルーしてたのが、「特撮そんな興味ないしなー」とスルーしていたのが悔しいです。昨年中に読んでいれば新作部門のベストで紹介できたのにー。


トクサツガガガ(1) (ビッグコミックス)

トクサツガガガ(1) (ビッグコミックス)

"特撮に限らずオタクという生物は極めて面倒臭いものであり、その変態さを如実に描写する事による共感とコミカルさ、それに特撮という題材ならではの“ヒーロー達の教えを実践できるか”というエッセンスが加わる事で、この「トクサツガガガ」という作品は唯一無二の面白さを獲得している。"
頑張れ仲村さん!「トクサツガガガ」は何故こんなにも面白いのか? 〜特撮オタクという生態〜 - YU@Kの不定期村


 良い感想を見つけました。リンク先でも言われてますが、アニメは明らかに大人をターゲットにした深夜放送アニメがあって、むしろ今はそちらがアニメオタクにとっての主流であるのに対し、特撮は絶対に子どもに向いたものという違いがあるんですよね。

 だからこそ特撮には子どもへ向けた色々な想いやメッセージが込められている。『トクサツガガガ』の仲村さんは日常生活で特撮好きを隠して生きつつもそうした子どもへのメッセージを大切にし、そして実践できる人です。いや、特撮好きとして実践せねばと思い実践している人です。

"そう、子供に向けられた物語だからこそ、「優しい大人になりなさい」という思いが、たくさん込められていて、ずるい大人になってしまいそうな時、自分のあり方にハッとさせられる"
(丹羽庭『トクサツガガガ』1巻)


 仲村さん自身は子どもの頃に「男の子向けの特撮が好きなんておかしいからもっと女の子ぽいものに興味を持ちなさい」と親に押し付けられて育っています。だから昔の自分と同じように特撮ものが好きな女の子が親に止められているのを見つけて「ヘンじゃないよ。欲しいって思ったもの、選んでいいんだよ」と伝えてあげます。こういう大人としての在り方に非常に憧れます。

 正直読む前は「オタクな女子かわいい」とか「ぼっちのアラサーかわいい」とか、そういう類の漫画でしょ?と思っていました。ですがいざ読み始めるとそんな「上から目線」な見方はなく、ただ仲村さんの大人としての在り方に対する尊敬と自らの身を省みて反省が残るばかりです。

 「大人は大人で大変だけれど、子どもの前では子どもが憧れる大人を演じている」という大人像は色々な作品で語られていて、自分も好きなものです。仲村さんの場合、子どもの前だけでなく周りの人に対しても特撮の教えを実践しています。そこが本当にステキだなーと感じます。

 そして『トクサツガガガ』はそんな「道徳的なお話」をそのままに打ち出すのでなく、随所で特撮好きらしいギャグを入れるなど落としながら、必死さを見せながらバランスをとっているところがまた子ども向け番組ぽいです。

 だから同じアラサー女子オタクものでも、レイヤー嫌悪の社会やその中で生きるレイヤーたちにフォーカスを当てる『コンプレックス・エイジ』が時に暗い展開になるのに対し、『トクサツガガガ』は常に明るい。それは「リアリティのないファンタジーなギャグ作品だから」というような単純な理由ではなく、むしろエピソード自体は誰の日常生活でも起こりうるもので、その中で一所懸命生きているからこその喜劇なのです。

 あと絵。絵がすごく好きなんですよこの漫画。美麗と言われるような絵ではないのだけど。顔の描き方で喜怒哀楽な感情がよく出ていて、柔和な感じで特に笑わせるようなシーンでなくても笑えてくるような絵で、なんとなくうすた京介に近い印象を受けました。



 私自身は特撮ものを観てませんが、今日も『プリパラ』などの女児向けアニメを観ているところだったので、仲村さんのように子ども向けフィクションで学んだことを大切にして実践できる大人になりたいなーと思いました。