TD、あるいは継承されるミルキィホームズ

 『探偵歌劇ミルキィホームズTD』最終12話すばらしかったよ。



 アニメ1期2期にサマースペシャルを担当した森脇監督の森脇ミルキィから、ふたりはミルキィとTDの錦織監督による錦織ミルキィへ。Project MILKY HOLMESセカンドステージの幕開けに放送されたこれはまさにミルキィホームズの継承であった。

 ある夢を諦めないことは別の夢に向かわないことでもあるし、それを皆が望んでいるとも限らない。それでもなお夢を諦めないことをTDは肯定する。感動を呼んだ1期11話の「夢を諦めない」をTDはより深堀りする。

 エレメントを失い落ち込むアイドル天城茉莉音は、かつてミルキィホームズもトイズを失っていたと知り、それでも自分のためにがんばるミルキィホームズに鼓舞される(1話)。以降「夢を追いかける中で、望まぬこともできるか?」(2話)・「夢を追いかける中で、何か大切なものを見落としてはいないか?」(3話)・「周りが現状をめちゃくちゃ肯定してくれるとき、それでも夢を追えるか?」(4話)・「叶わない夢を追い続けるなんて、そんなの惨めじゃん?」(5話)・「みんなが偽物で満足してしまっている中、それでも夢を追えますか?」(6話)・「夢なんて追わない方が気が楽なんでは?」(8話)・「先を行く友人を間近にしそれでも自分を見失わないか?」(9話)というサブタイトルがつきそうな冒険を茉莉音は乗り越える。

 そんな茉莉音の話も11話できれいにまとまり、これでは12話は蛇足に感じるのではないかという危惧も実際あったが、終わってみれば蛇足どころか12話がなければTDでないレベルの出来だった。

 12話では茉莉音の事件を全て解決したミルキィホームズにいくつか別の事件を追わせる。ミルキィホームズの日常とはヨコハマで起きる事件の捜査であり、茉莉音の事件もこの内のひとつ。ミルキィホームズはヨコハマの様々な事件を任せられ、だからこそヨコハマ市民に大人気(1話)のミルキィホームズなのだ。

 その中でミルキィホームズは怪盗と出会う。怪盗もまたヨコハマにおいて探偵と同様に重要な存在であり、そのヨコハマにおける役割は探偵(や警察)の力を維持することだ。

 麗しき破滅の桃色、十津川は小衣ちゃんのガス抜きのため怪盗として活動する。怪盗帝国、怪盗アルセーヌは「いつも通り」のミルキィを見て満足し立ち去る(「いつも通り」でないミルキィへのアルセーヌ様の対応は過去シリーズを参照)。
 もし怪盗帝国がいなければミルキィさんはいつもだらだらとダメダメになってしまうだろう。結果的に怪盗の行動が探偵や警察の力を維持し、ヨコハマの平和を守っている。だが怪盗がヨコハマのためを想って動いているというわけではない。
 怪盗にしても探偵にしても、それぞれ私利私欲に動くキャラクターによるヨコハマ世界があるべき場所に収まっていくのは「神の見えざる手」のようで美しい。

 このヨコハマ世界の構図を最後に示したのがTD12話であり、探偵歌劇ミルキィホームズTDであり、錦織ミルキィである。

 これは錦織監督の解釈したミルキィであり、Project MILKY HOLMESにおいてオリジナルというものはないようなものなので、今後も他の誰かによる新しいミルキィホームズやヨコハマ像が提示されるのだろう。そんなミルキィホームズの継承を見て、将来のそれを感じたTD12話であった。

 さてさてTDの12話はヨコハマ世界を示した、だけに終わらない。探偵と依頼人=ヨコハマ市民という構図を示した上で、それでも天城茉莉音はただの依頼人ではない。ミルキィホームズと茉莉音は友達なんだと伝えるハートフルな物語を見せ幕を閉じる。

 「夢を諦めない」という天城茉莉音のストーリーの中で、ミルキィホームズとの友情が育むストーリーもまた進行していたのだ。ここまでのミルキィホームズと茉莉音の友情話は、3話での対立であるとか、それまでミルキィホームズに助けられていた茉莉音がミルキィホームズを助けるためにがんばる7話であるとか、また10話アン・ガーディとの友情そして別れ、11話の茉莉音と美樹の仲直りなんかも積みになっている。

 エレメント戦でははじめは助けられる役割だった茉莉音が徐々にミルキィホームズをサポートし始め、最後には一人で戦えるようになる、というのは、茉莉音の心の成長だけでなくミルキィホームズとの友情も意味するものだった―――。

 キッズアニメを意識した前作『ふたりはミルキィホームズ』とは異なり、また同じギャグテイスト強めでも森脇ミルキィとも違った道を拓いた『探偵歌劇ミルキィホームズTD』。今度はどんなミルキィホームズが見られるか今から楽しみである。TDが楽しみにしてくれたのだ。