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今週の黒ロン:『響け!ユーフォニアム』

今週の黒ロン

 『響け!ユーフォニアム』を観ています。アニメの醍醐味はやはり動きですね。



 ちょうど直近で観ていた『SHIROBAKO』もそうだったんですが、、誰か一人がすごい力を発揮して何かを変えるようなものではなく、むしろ一人一人では力を発揮しきれない苦悩と努力、その集合の描かれているのがとても良い。

 顧問の滝先生には優れた指導力がありますが、高校生たちの人心掌握にはだいぶ苦心しますし、高坂さんは一年でソロに選ばれるくらいトランペットが上手でも「特別になりたい」とか「ソロに選ばれたら悪者に見られる」とか高校生らしい苦悩もしています。

 多くのフィクション作品は、こうした優れた能力のある人たちが苦戦はしつつも意思の強さや何かによって推し進めていくという一個人の物語の方をクローズアップしていますが、『SHIROBAKO』や『響け!ユーフォニアム』は過程で問題が生じつつも「なんとか事態がうまくまわっていく」という吹奏楽や部活といった競技や組織の方に焦点を当てているように感じます。結果、両作品ともに優れた群像劇となっています。


 集合を描くものだから個々に対してはコストを割かないかと思いきや、『響け!ユーフォニアム』は個々の違いを出すために他作品以上に作画・演出に凝っています。写実的な演出、特に髪作画に見入ることもしばしば。京都アニメーションは『氷菓』の髪作画もすごかったのですが、今作はより写実的になっていて、髪作画だけで時々はっとさせられます。


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 線画に色を付ける「色トレス」により光の反射具合や髪の厚みの違いを出しています。だけでなく、よく見ると右目や左頬に「一本だけ」かかっている髪が見えます。

 漫画ではサブロウタさんの『citrus』なんかも同種の表現を採り入れています。ロングヘアーの毛先の方までこの反射の表現を使っているために、それが髪のねじれも感じさせます。また「一本だけ」違う動きをする髪の表現が『citrus』でも見られます。


citrus: 3 (百合姫コミックス)

citrus: 3 (百合姫コミックス)


 「一本だけ」外れる髪の動きが顕著に表していますが、両作品とも髪一本一本の動きの細かな違いを出しており、「髪は一本一本の集合である」ということを意識した髪作画です。


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 これは「髪の動きをどう描くか?」という問題にもつながっていて、例えばキャラクターが走る場面で髪型が崩れないのは不自然ですが、「髪の毛先の方まで不自然なくらい均等な固まりがいくつかできている」という動きの付け方も、やはり不自然なものです。それは「髪は一本一本の集合である」ことを意識して作られておらず、したがってそれが感じられないからです。

 だから『響け!ユーフォニアム』は髪の動きもいい。漫画にはない、動画だからこその醍醐味はやはり動きです。

 髪の動きを見る上ではストレートロングヘアーのキャラクターに注目です。クセのついていない長い髪がちょっとした動作でどう動くのか。すなわち高坂麗奈さんです。5話で髪をかきあげるところ、11話でオーディションに向けてターンするところ、12話冒頭、滝先生に「あなたがソロです」と言われて頷く(=頭の動きがある)ところ。その他ちょっとした動きが写実的な演出で髪作画に見入ります。


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 吹奏楽や部活が一人ではできていない・できないのと同様、髪も一つでできているわけではない。どちらについても一つ一つの違いとそれを意識した作画・演出が『響け!ユーフォニアム』を優れた作品に仕上げています。