2015年上半期に読んだマンガ部門別十選

  • はじめに

 当ブログ初の試みとなりますが、上半期単位での読んだ漫画十選を発表します。今年はわりと漫画を読んでいる年で、このへんで一度整理しておきたいというのと、あとは周りで何人か作ってる人がいて面白そうだなーと思ったので。

  • レギュレーション

 過去2年の十選と同様、当ブログは部門別ランキングをプッシュしていますが、今回は若干レギュレーションを変更しました。2015上半期の十選は、読んだ時期と関係ない2015以外部門をカットし、代わりに総合部門を2枠追加の4作としています。
 今の部門分けですと今年より前から読み続けていて完結していない作品という、質も量も最大な枠が全て総合部門(と黒ロン部門)に入ってしまうため、ここを2枠に収めるのは困難と判断しました。加えて長期連載を入れにくい事情もあったため、実はTSUTAYAみたいに準新作部門を作ろうかとも考えていました。それを考えてかつ作品を選ぶとなるとまた時間がかかるため、とりあえず上半期は総合部門4作という暫定処置をしています。


・新作部門
 対象:今年、1巻が出た漫画から2作。
・完結部門
 対象:今年、完結巻(1巻完結含む)が出た漫画から2作。
・黒ロン部門
 対象:今年、単行本が出た黒ロン漫画から2作。
・総合部門
 対象:今年、上記以外で単行本が出た漫画から4作
・2015以外部門
 対象:今年、単行本は出ていないが初めて読んだ漫画から2作。


  • 新作部門:『ゴールデンカムイ』

 歴史・民族・グルメ・ギャグ・バトルetc.贅沢に盛り込んだエンターテイメント。それが『ゴールデンカムイ』です。
 大きな目標を目指す冒険のワクワク感は、残念ながらいつまでも続くわけではありません。目標が大きければそこに早く到達してしまうわけにはいかないし、進展なく長く続けば読者は必ず飽きます。
 多くの長編漫画はそこをキャラクターの魅力でなんとか持たせようとしますが、『ゴールデンカムイ』はそれだけはありません。目標に向かう冒険の途上でアイヌ民族のウンチクや野生のグルメな楽しさを盛り込んだり、主に白石のギャグでテンポをよくしたりと、むしろ冒険譚よりこっちがメインではないかと感じさせ、読ませ続ければこっちのもの。緩急をつけて勢いある野生の戦闘が待っています。

 チャンピオン系列でハイクオリティな漫画を描き続けている木々津克久さんの新作は、元警察官・現ガイコツ幽霊の兄貴とハイスペックな美少女である妹とが組んで街の不思議な事件に挑むホラーミステリー
 兄貴の事件というストーリー上の大目標に向かう過程で、街の不思議な事件という小目標が続く構成が巧くいっていて、マンネリ感やじれったさがなく快適に読んでいます。
 また個人の感覚レベルの話かもしれませんが、過去作と比べるとリーダビリティがぐっと上がっているように感じます。木々津さんの漫画は描写が細かく、ページ数が少ない中で情報量を詰め込んでいるため、読み返さないと分からないこともけっこうありましたが、今作は流れが把握しやすく非常に読みやすいです。木々津克久さんの漫画を初めて読む人にすすめてみたい漫画。

 大卒フリーターリクオ。自由奔放な少女・ハル。リクオのかつての想い人・榀子。榀子の想い人であった早川湧の弟・浪。ずっと同じ人が好きでいる四人を中心とした日本のモラトリアムを象徴する漫画、ついにまさかの本当に完結。
 しばらく前、と言っても数年前までの『イエうた』は、メインの4人に関わり始めた人たちが何かしら自分の道を見つけ、彼らを通り過ぎていくという流れが続いていました。普通の人たちよりも進むのが遅い彼らは半ば舞台装置のようにゆらゆらと止まってきましたが、ついに核心となる彼らの物語に突入したのも数年前。
 全体を通して「恋愛にせよ何にせよ、少しくらい人よりペースが遅くても全然大丈夫だよ」というメッセージをもらった気がしています。他人から見ればいつまでも同じところをぐるぐる回っているようなリクオたちも彼らなりに進んでいて、なるようになっていきますし、この漫画だって他より掲載ペースが遅くても完結したのですから。

鉄風(5)

鉄風(5)

 能力に恵まれたためにまっすぐに歪んだ主人公が総合格闘技の世界で暴れる――。女子総合格闘技の漫画よりはダーク青春ものとして楽しんでおりました『鉄風』も今年完結。現在、完結巻は出ていませんが今年中には出る予定なので選出です。
 ともすればダークサイドに傾いてしまいそうな主人公の話を、あまり鬱方面に踏み込まないよう、飄々とした周りのキャラクターでうまいことバランスとっているのが良いなと。日常シ-ンの楽しさが激しい試合の緩急にもなり、また夏央の青春を相対化させることにもなったと思います。
 キャラクター、特に主人公の背景事情を言葉で説明してしまわず、途中1シーンの回想や断片的なセリフで感じさせる構成は実に見事。その過去が明らかになる6巻の早苗戦は非常にインパクトと勢いあるものでした。
 トーナメントとしては続きが気になるところで終わっていますが、最後まで「充実した人間を許せない」と言いながら充実していっている、充実することが許された夏央の物語としては良い終わり方でしょう。
 全編を通して「少しくらい歪んでいても青春大丈夫」というメッセージをもらったように感じます。こういう人間のネガティブなところを肯定してくれるフィクションまじ貴重。あとこの漫画がお兄ちゃん大好き黒ロン妹漫画だった事実に最終回改めて気づき感動でした。

  • 黒ロン部門:『恋は雨上がりのように』

 クールな女子高生が恋い焦がれる相手はなんとバイト先の店長である中年男性――。今年も初めから推してきましたが、『恋は雨上がりのように』引き続きおすすめであります。
 「可愛い女子高生」を描く漫画は数多あれど、「きれいな・美人な女子高生」を描く漫画は実は希少で貴重です。『恋は雨上がりのように』はそれができているというのと、キャラクター設定ではステレオタイプなわかりやすいキャラ付けをしていないこと、また全体の描写を通してモノローグで語り過ぎず、絵を見れば分かるでしょう?といったスタンスが私好みです。
 そのためモノローグにじゃまされず、黒ロン美人をたっぷりじっくり堪能できるというのが幸福な読後感に繋がっています。
 ストーリー的には2巻から早速、年の差恋愛ものの面白さが出てきて今後も楽しみな作品です。

  • 黒ロン部門:『citrus』

citrus: 3 (百合姫コミックス)

citrus: 3 (百合姫コミックス)

 ギャルと生徒会長がある日突然、義理の姉妹に。正反対の二人が同居し始めふれあうことで惹かれ合っていく百合姫の至宝『citrus』はとにかく黒ロン描写が巧い漫画です。
 絵が巧いのと漫画が巧いのとが異なるのと同様、絵が巧いのと黒ロンが巧いのとも違いますが、作者サブロウタさんの緻密に髪の一本一本を意識して描かれた黒ロン描写はとても美しい。単行本表紙や公開されているPV動画で見られますので、ぜひご自身で確認を。
 ストーリーは百合漫画では珍しい突然同居。学校から帰れば物理距離が近すぎるくらい近いのに、相手が何を考えているか分からない。じれったくも少しずつ近づいていく――と思ったら突然のキス!?と緩急激しい黒ロン妹には姉だけでなく読者諸氏も翻弄されています。序盤からキスシーンがあるのがうれしくもあり急ぎ過ぎにも感じていましたが、3巻のキスは始めよりもっと強くなっており素晴らしい。3巻、昼ドラぽい嫌な展開に振り切らず、キャラクターに悪印象を与えずまとめたのも良かったです。

  • 総合部門:『トクサツガガガ』

トクサツガガガ 3 (ビッグコミックス)

トクサツガガガ 3 (ビッグコミックス)

 特撮オタクである26才OL仲村さんの日常奮闘記。今年、当ブログが最もおすすめするのがこの『トクサツガガガ』であります。
 この漫画は「オタク趣味を隠す女性の日常をコミカルに描いたもの」ではなく、「好きなことから学んだことをどう生活に活かしていくか」という、誰も無関係でないものを描いています。主人公の仲村さんは特撮から教わったことを日常様々な場面で活かしてピンチを乗り越えたり、仲間をつくったりします。
 フィクション作品を見て感銘を受けても次の日には忘れてしまったり、現実は厳しい別物と距離を置いてしまたりの自分は反省するばかりで、これが例え所詮お話のフィクションであっても、こういうフィクションも今必要なんだなと感じます。
 私自身、もう特撮作品を見ることはほとんどありませんが、『トクサツガガガ』を特撮好きだけのコンテンツに収めておくのはあまりにもったいないと思うのです。

 成績優秀な高校生・丸尾栄一郎がテニスの楽しさにのめり込み、やがてプロを目指すようになる『ベイビーステップ』は今年ついに初期からの目標であるタクマさんと対戦。いやーここまで長かったです。
 確実に強くなっているし世間の注目度も高まっているエーちゃんですが、いつもここぞで負けてしまいます。必死で頭を使い誰よりも努力をし、それでもとんとんでステップアップできるわけじゃない。タイトル通りベイビーステップ。エーちゃんは今回も苦戦しますが、『ベイビーステップ』という漫画はベイビーステップどころじゃない。ここ数年ずっとピークを落とさない面白さを維持しています。
 またこの後おそらく「ベイビーステップ就活編」が始まるのが楽しみで楽しみで。他のスポーツ漫画ではなかなか見られないスポーツ選手の就活が見られるのも、エーちゃんという頭いい主人公ならではの楽しみです。

  • 総合部門:『はねバド!』

はねバド!(4)

はねバド!(4)

 週刊少年ジャンプで『パジャマな彼女。』を連載していた濱田浩輔さんの新連載はなんとスポーツ、バドミントン漫画です。
 とは言え初期の評価は自分の中で決して高くなく、かわいい女の子がゆるく部活スポーツやってるな、ラブコメの人がスポーツ描いてるな、という印象でした。
 ところが3巻くらいから明らかに絵が変わり始め、緊迫した臨場感とショット描写の勢いがものすごいことに。バドミントンのスマッシュはトッププロでは時速400キロ級も出ると聞きますが、あまりバドミントンの激しさを知らない自分も納得いくレベルに『はねバド!』のスポーツ描写は激しいです。
 現在のストーリー展開としても面白いのが、インターハイ予選途中で主人公が世界ランク1位に勝っているという今の状態。一般的に強くなりすぎた主人公はトーナメントにおいてハンディキャップ戦を強いられますが、『はねバド!』は視点を主人公以外に移し、挑む展開にシフトさせたのが巧い。変にわざとらしい苦戦をさせず、勢いある試合が続いています。現在はそのインターハイ予選も決勝と、今乗りに乗っているスポーツ漫画。

  • 総合部門:『ストレッチ』

 高校の先輩後輩関係であった、現OLの慧子と医大生の蘭。性格も生活環境も置かれた状況も胸の大きさも異なる二人が同居してやることと言えばひとつ。そうストレッチ――。
 『ストレッチ』は二人がストレッチしてなんとなく和む1話完結ゆるふわ漫画ではありません。随所で垣間見える二人の背景、特に家族関係は重いものがありそうで。それを感じさせつつも、感じさせるがために日常のストレッチしてなんとなく和むがより愛おしく思えます。高校の先輩後輩で同居もしているのに、その背景であるお互いの家族関係に踏み込み過ぎない二人の距離感は現代的で、理想的なシェアハウス漫画としても楽しんでいます。


  • 総括


 といった想いで今年も部門別に選出しています。皆さまの参考やたたき台になれれば。
 基本的には上半期に読んだものから選んでいますが、Kindleで買っているので実際の出版ペースとずれているものや、読んでいても評価保留しているものもあります。あと強すぎるので外したものも何点か(『マホロミ』とか)。
 こうしてまとめて見ると歴史漫画少ないなー確かに長編多いから数は手を出せてないなー等、いろいろ発見もあるのでまあまとめてみるべきですね。ちょっとこれから忙しくなるのですが年末更新もやっときたいです。