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今週の黒ロン:『新米姉妹のふたりごはん』



  • 料理漫画として

 伝統的(?)な料理漫画にとって調理のシーンはあくまで過程であり、料理の出来上がりや食べた人の反応をピークに持っていくまでの滑走段階に過ぎませんでした。既にgood!アフタヌーンの人気連載となっている『甘々と稲妻』そしてこの『新米姉妹のふたりごはん』はかつて過程に過ぎなかった調理シーンをメインに、料理する楽しさを押し出しています。
 疑似家族ものとして『甘々と稲妻』は一般的な家庭料理を作ることを通じて3人が「家族」になっていくのに対し、『新米姉妹のふたりごはん』は一風変わった、しかしやろうと思えば家庭でもできるレベルの料理を扱っており、「こんなものが私に作れるんだ!」という驚きや感動体験の共有を通じて2人が「姉妹」になっていくという形でストーリーに料理が繋がっています。
 2人の作る料理は時に見慣れぬ調理器具や食材を要しますが、それもインターネット通販で簡単に手に入ること、その値段まで各話末のコラムに書かれている点が親切です。
 料理を通じてコミュニケーションする2人の間には周りが呆れるほどに「料理」と「お互いのことが好き」しかなく、何か別のことをやろうとしても結局そこに戻って来てしまう様が美しい。という構図はメロンブックスの特典漫画によく表れていました。今ならまだゲットできるぞ!

  • 黒ロン漫画として

 『新米姉妹のふたりごはん』はこうしてこの場で書いている通り、料理漫画であるだけでなく黒ロン漫画でもあります。昨今あまりにあざといために避けられがちな黒ロン黒セーラーを見事に作品に調和させている様はまさに著者である柊さんの「料理」です。

───あやりといえば毎回髪を結ぶシーンがありますよね?

柊:気づいていただけで嬉しいです!意識して毎回入れるようにしています。決めポーズというか……料理前に髪を結ぶのとかかっこいいと思って。他にもあやりが調理してる姿とか自分なりにこだわって描いているのでかっこいいと思ってもらえば嬉しいです。
【コラム】 「新米姉妹のふたりごはん」第1巻発売記念 柊ゆたかインタビュー【生ハム原木】 : アキバBlog


 あやりが料理するときに髪を結ぶのは、いろんな髪型を見て楽しめることや、柊さんの言う通り決めポーズ的な意味もあるでしょうが、個人的にはリアルな挙動を挟むことで黒ロンをよりリアルに感じられる点が良いと思っています。
 あやりの黒髪は比較的リアル志向の描き方がされているため、普段から髪の繊細な動きが感じられますが、ここに髪を結ぶという日常的な仕草が入ることで、美しい黒ロンの絵を見ている状態から現実の黒髪を見ているかのように読んでいて感覚がシフトしていくのがたまりません。

 外出時は制服でと学校で言われているからと、休日のお出かけも制服で行こうとしたり、映画館でポップコーンが食べられることを知らなかったりと、『新米姉妹のふたりごはん』では各所であやりの育ちの良さが伺えます。そんなあやりが料理するときには大胆になるギャップも本作の大きな魅力であります。
 1話の黒ロン黒セーラー女子高生に合法的合理的に刃物を持たせた図は、黒ロン黒セーラー+日本刀の伝統的な優美を新たな形で生み出したという歴史的な意義もあるのです。