今週の黒ロン:『ななしのアステリズム』

 連休も終わりが見え始め、ふと高校を出てからもうずいぶん経ってしまったなあと昔を思い返す。どころか大学を出てからもしばらく経っていた。

 そんなふうにまあ、ぼくもそこそこに生きてきたから実感を持ってこういうことを言うのだけど、昔すごく仲が良かった人と今は全く疎遠になるなんてことはざらにあるものだなあ、と。当時は考えもしなかったことを、如何にも自然なことのように感じる。

 中高のとき仲が良かった人と久し振りに会って、結局ひどく表面的な話しかできなかったときの絶望感と言ったら。でもそんなことにも徐々に慣れてきている。それを「成長」と呼ぶのにはまだ躊躇いと疑いがある。



 『ななしのアステリズム』のキャラクターたちは3人の友達関係を維持するためにそれぞれ隠し事を持つ。そこには間違いなく変化への恐れがある。相手の変化への恐れ。自分の変化への恐れ。関係の変化への恐れ。
 中学1年という世界があっと広くなって、急に狭くなって、周りがどんどん変わっていく彼女たちの時間が、世界がそれを加速させている。中学生という小学生でも高校生でもない、フィクションで描くにも難しい世界がここにある。

 この手の話の類型は男女入り混じった3人であらば数えきれないが、『ななしのアステリズム』の場合は全員が女子である。したがって中学生になってみんな「普通の恋愛」に向かって行く中で、「自分だけ」同性愛へ向かうことへの恐れも彼女たちにはある。結果、彼女たちのバランスは表面的には危なげなく保たれている。おそらく同じ題材でも男女入り混じった3人であれば、誰かが早々にこのバランスを崩しにかかる、はずだ。


 「『ななしのアステリズム』は7話まで読んでほしい」というすすめ方がこれから流行るはずだ。

私達は 同じ気持ちで 同じ強さで 同じ重さで お互いを”好き”じゃないとダメなんだから……(第7話★テンビン)


 まさかのミスリードでした。


 キャラクターの心理描写が丁寧で、それはメインの3人のみならず、彼女たちに深く関わる男性たちも当て馬のごとく利用されては終わらない。それが彼女たちのバランスを、彼女たちの隠し事とは別の方向から、揺るがしにかかる。

 突如現れたイケメン男子は意外にも良いやつで諦めも悪く、まだ背景が見えないために何度も彼女らの前に現れそうだし、主人公の双子の弟に至っては重度のシスコンで、時間経過による関係の変化を恐れる双子という単体でメイン張れるやつが彼女らの三角関係を見据えている。


 「アステリズム」とは星群のことであり、「ななしのアステリズム」とはまだパターン化されていない彼女たちのことを意味しているように思う。こういう話に、「どうせいつか終わるんだから今何をしても無駄」と言うふうにはまだ割り切れないが、おかげでこの漫画を今非常に面白く読むことができる。





 実に三カ月ぶりに今週の黒ロンを書いたらすっかり黒ロンポイントを書き忘れてしまうところであった。今週でも黒ロンでもなく終わる今週の黒ロンになるところであったが、『ななしのアステリズム』のポイントはサッカー少女であるボーイッシュで天真爛漫な主人公・白鳥司が、見事に黒髪ロングストレートなところである。

 中学生活の初日。通学途中、司の長い髪がある生徒の制服のボタンに絡まってしまう。『ななしのアステリズム』はそこから始まる。
 この些細でありきたりな事件は、しかし彼女たちそれぞれにとって特別な意味を持つことになり、それはそれぞれの胸に内に秘めている。特に司の場合は、それまでさして意味のなかったロングヘアへの特別な意味付けとなって今日に至る。

 司のロングヘアにはしっかりとした意味があり、そのエピソードが全体の話の中でさらに何重かの意味を持つ。『ななしのアステリズム』における3人の百合三角関係において極めて重要なファクターとなっているのだ。

 あと突如告白してきたイケメン男子が、ちょっと会ってみたら親切だし気遣いできるしなんだこいつめちゃくちゃ良いやつじゃん!みたいなエピソードをへーってわりと無感情で読んでいたのだが、その後で黒ロン好きなのが判明してなんだこいつめちゃくちゃ良いやつじゃん!てなりましたね。そんな漫画です。