『BE BLUES!』を読んでいない人のための『KICKS』(と桜庭さん)解説

 『HUNTER×HUNTER』が休載決定でもう終わり? いやいや俺たちには桜庭さんがいるだろ!!!


(桜庭さん(表紙))


 とゆーことで週刊少年サンデー絶賛連載中のサッカー漫画『BE BLUES!』に桜庭さんが出てきましたよ。

 現実時間にしてなんと8か月ほどまともな活躍の無かった桜庭さんですが(ベンチにはいた)、ここにきてまさかの途中出場。そのリアルタイムな騒動は、サンデー読者にとって桜庭さん1人が『HUNTER×HUNTER』に匹敵する存在であることを再確認させてくれました。

 さて週刊少年サンデー本誌の展開もさることながら、桜庭さん大好きクラスタにとってもうひとつ朗報があります。テレビドラマ『重版出来』の公式サイトにおいて、『BE BLUES!』の著者・田中モトユキ先生が、作中の雑誌に掲載された作品という設定で『KICKS』という漫画を描いているのです。


www.tbs.co.jp
(上のリンク先が『KICKS』無料公開ページになります)


 これがまるで桜庭さんが主人公のような漫画でものすごいので、タイトル通り『BE BLUES!』を読んでいない人に向けて『KICKS』(と桜庭さん)のすごさを説明します。

  • そもそも『BE BLUES!』とは?

 埼玉の天才少年と呼ばれた一条龍が小学生のときから始まり、日本代表を目指すサッカー漫画。現在は高校編で、ユースのチームではない、公立の強豪校から「上」を目指しています。
 場面場面でキャラクターの活躍にスポットを当てるタイプのスポーツ漫画とは異なり、試合全体が分かるような描写がされている(誰がどこにいて、どうパスがつながったか等)のが特徴。あまりサッカー見ない自分が言っても説得力皆無ですが、リアルなサッカーの試合映像を採り入れた漫画と思います。

 あまりキャラクター色の強い漫画ではありませんが、試合全体を描いている関係で、主人公だけでなくその周りのライバルやチームメイトの活躍もたくさんあり、キャラクター人気も強いです。特に桜庭さん。


  • そもそも桜庭さんとは?

 『BE BLUES!』における龍のライバル役。小学生の頃から龍をライバル視しており、身体能力は低いが技術が半端なく高い。
 特徴としては「パスを出さない」(自分で得点できるandしたいから)、「マークを外す動きをしない」(マークされてても得点できるandしたいから)、「常に尊敬を受けたい」(性格的に褒められることがないand褒められたいから)などなどあります。

 漫画においては(あるいは社会においては)、いくら個人の能力が高くても高圧的で自分勝手な選手は出る杭打たれる宿命にありますが、そんな中で桜庭さんがすごいのは、単行本にして既に10巻以上続いている高校編において、いや1巻初登場の小学生だった頃から比べても、何の「成長」もしていないところです。*1

 性格的にもプレースタイル的にも問題がある桜庭さんは、そのせいで敗北を喫したりチームにトラブルを起こしたりしています。そうして物語は桜庭さんの矯正に動き出し、幾たびと彼にパスが出せれば簡単に解決できる成長のきっかけを作りますが、そのたびに桜庭さんは与えられた模範解答以外の方法でその状況をクリアーしていきます(尊敬しかない)。

 結果的に桜庭さんは、今まである特殊状況下でパスを出すこともありましたが、基本的なプレースタイルと性格は維持したまま現在に至ります。

 働き初めてすっかり丸くなってしまった方にも、あのころの尖っていた自分をもう一度思い出してほしい。そう、桜庭さんの活躍を見ることで……。サンデー読者はいつだってそうやって生きてきました。

  • これまで何が起きていたのか?

 桜庭さん不在期間、サンデーには新編集長が就任。大規模な改革を宣言し、新体制へと移行しました。まずは『だがしかし』がアニメ化で一気に知名度を上げ、新しい連載陣もなかなかに好調です。ベテランの藤田先生・西森先生も久し振りに戻って来て、驚くほどにどんどんおもしろい雑誌になっています。
 ただ、桜庭さんがいなかったんだ………。

 桜庭さん不在期間、『BE BLUES!』では新しく外国人の監督が就任。新体制となったチームは、監督の意向を汲めず戸惑いますが、龍の機転もあって一転。新戦術を軸に大量得点で勝ち進みます。
 そんなとき強敵が立ちはだかり、試合は一進一退の攻防が続きます。その中で体制の変化についていけないでいたエースの活躍や通訳として言葉以上に監督の意向を伝えるマネージャーの成長など、色々な面から試合を見せていました。
 ただ、桜庭さんがいなかったんだ………。


  • 『KICKS』の何がすごいか?

 やっと『KICKS』の話に入れます。『KICKS』の何がすごいかと言うと、これが『BE BLUES!』の龍と桜庭さんのポジションを入れ替えた漫画ということです。それはサッカーのポジションという意味ではなく、漫画における主人公の位置に桜庭さんが置かれているという意味です。

 キャラクターの立ち位置入れ替えという公式同人誌的な遊びは、他の漫画でも単行本のおまけとしてたまに見ますが、桜庭さんが「俺様を尊敬しろ」が口癖なくらい常に尊敬を求めている情報と併せて読むと、この入れ替えが実にぴったりで楽しいのです。

 『KICKS』1P目。左の女子が龍の幼なじみでちょっと男勝りですが龍に対しては献身的で尽くしてくれる胸が大きな現在は高校サッカー部のマネージャーです。言うまでもなく龍のことが好きです。
 右の女子が一度サッカー部へ見学に来て大騒ぎになったほどのハーフ美少女。フィギュアスケート界のホープで、龍のプレーを見てファンに。現在は龍の追っかけ。言うまでもなく龍のことが好きです。

 『KICKS』3P目。黒髪ポニーテールの女子はサッカーとは何の縁もなく生きてきましたが、英語が得意なことから新監督の通訳としてチームに加入。長身でスタイルもよく、凛々しい印象からクラスでも人気で、本人もはじめこそ体育会系なノリを嫌っていましたが、現在は言うまでもなく龍のことが好きになり始めています。

 と、ここまで説明してきたのは『BE BLUES!』の話で、『KICKS』では上に書いた龍の箇所が全て桜庭さんに置き換えられています。

 これを読むと桜庭さんがずっと求めている尊敬や称賛を受けているのが龍で、桜庭さんがたびたび龍に突っかかるのは、龍が桜庭さんの求めているものを持っているからかと推測できます。
 しかし実際、桜庭さんは龍のようには生きられません。『BE BLUES!』と合わせて『KICKS』を読むことで『KICKS』には全く描かれていない、桜庭さんの孤独と哀しさとそれを上回る圧倒的な強さを、浮彫のように感じられるのです。

  • ついでに本誌の展開について

 現在、週刊少年サンデー本誌では、これ以上ないくらいに桜庭さんが称賛を浴びています。ついに時代が桜庭さんに追いつきました。
 『BE BLUES!』という漫画は龍の不屈の精神が周囲に影響を与え、一度挫折した人々を良い方向へ持っていくところがドラマとしての醍醐味ですが、今回は桜庭さんが龍の信念である「決めるべき時に決めてみせる」を実現して見せ、今度は龍に刺激を与える新展開となっています。読もう週刊少年サンデー


*1:念のため補足するとぼくは桜庭さんが成長していないとは思っていません。チームメイトと信頼関係を築くのは確かに成長ではありますが、それはひとつの成長でしかなく、それ以外にも選手として能力を伸ばす道はいくらでもあります。それなのに協調性のみを指して「成長」しろと矯正する社会を皮肉った、また道標なき世の中において与えられた道を進むのではなく、自分の頭で考えるということを教えてくれるのが桜庭さんというキャラクターという見解です。ですので正確には、桜庭さんは成長はしているが、社会に迎合した「成長」はしていないというスタンスです。このまま続けてほしいところです。