『Life Is Strange』 何度でも選び直せる選択肢の重さ

 『Life Is Strange』をクリアー。もともと『ペルソナ5』をがっつりプレイできる時間を取れないから短い手軽にできるゲームを探していたはずなんですが、確かに短いけれどその代わりとんでもなく重いゲームでした。ゲームやって吐いたの初めてだよ。どうしてこうなった。



 『Life Is Strange』は時間ループ系のゲームです。プレイヤーはアメリカはオレゴン州の18歳、マックス・コールフィールド(通称:マックス)を操作します。物語の序盤、マックスは突如時間を戻す能力に目覚め、その能力を用い、旧友のクロエと一緒に街の謎を調べていきます。


www.jp.square-enix.com


 ですが『Life Is Strange』は上の説明から多くの人が想像するような内容のゲームではありません。多くの時間ループ系の作品とは趣向が大分異なります。
 要するに『Life Is Strange』は、みんなが幸せになる「true end」を掴み取るために何度も時間を移動するようなゲームではありません。

 『Life Is Strange』にはアドベンチャーゲームで言うところのバッドエンドや詰み、不正解の選択肢というものがありません。基本的にはプレイヤーはどの選択肢を選んでも、あるいは選ばなくてもゲームオーバーには至らずそのまま進められます。
 これは一見簡単そうに思えますし、ゲームとしては簡単なシステムと言って間違いありませんが、しかし精神的には全く簡単ではありません。

 例えばAという選択肢を取ることで誰かが死ぬことが分かったとします。
 プレイヤーはその誰かを助けるためにA以外のBという選択肢を見つけて、その誰かの犠牲を回避できます。
 ただ、前述の通り回避できなくてもゲーム進行上は全く問題ありません。その場合プレイヤーは自分が本来助けられるはずであった誰かを殺したという罪を背負って、その後もゲームを続けることになります。

 ここで2つの疑問が生じると思います。ひとつはその例で言えばBを選んでいれば問題ないし、多くのプレイヤーはそうするのではないか、というもの。もうひとつは名前もないキャラクターの無機質な死くらいで罪なんて大げさではないか、というもの。

 前者に関しては、Bという選択肢がその場ですぐに分かるものであれば、そうでしょう。ただ、『Life Is Strange』では「Aという選択肢を取ることで、誰かが死ぬことが分かる」のが数時間後・数日後、場合によってはエピソードを跨いでの判明ということもあります。当然、マックスの時間を戻す能力が届かない範囲です。

 後者については2つあり、まず『Life Is Strange』で死ぬのは名前のないキャラクターだけではなく、かなり主要な、マックスの身近な人間も死にます。そしてその人が死んでもゲームオーバーとはならず、進行上は問題ありません。
 そしてもう一つは、例え名前もないキャラクターであっても無機質な死に感じさせない、『Life Is Strange』のエモーショナルな細部の造りがあります。

 『Life Is Strange』においてプレイヤーはマックスを操作して事件を調査することになります。プレイする中でプレイヤーはマックスの性格をよく知ることになり、マックスとして行動することになります。

 探索の中でマックスは周りのいろいろなものに興味を示し、時には茶目っ気あるコメントをしたり、時には勇気を出していじめを阻止しようと努めます。
 探索パートだけではありません。ムービーシーンでのマックスの発言・行動。マックス視点から映る街の情景描写。心情を表すような音楽。探索中に確認できるSNSでのやり取り。いつも付けている日記の内容。それら全てがマックスの性格や周りの人間との関係を知る情報です。
 こういった情報を知れば知るほど、プレイヤーはマックスであればどう行動するか? マックスにとってどういう意味のある選択かを考えるようになります。なってしまいます。

 メタ視点にいるプレイヤーとしては名前もないキャラクターの死であっても、マックスにとっては目の前の人間の死です。そのマックスが、「わたしのせいでこの人が死んでしまった……」とコメントするのです。まあ、普通の人なら時間を戻して助けるでしょう。

 そうしてプレイヤーは時間を巻き戻すことで助けられる人たちを助ける、助けようと思います。それはおそらく『Life Is Strange』以外のゲームではプレイヤーが取らない行動、抱かない想いです。そしてそれを生じさせるのが『Life Is Strange』の大きな狙いです。

 『Life Is Strange』において常に助けられる人を助けようとしてきたプレイヤーは、ある重要な局面で、本来助けられるはずだった犠牲者がいたことを知り、また助けようとしても助けられない人に出会います。
 それまで時間を巻き戻すことで上手くやってきたプレイヤーは、そこで自分の選択の愚かさや自身と時間能力の無力さに直面し、そしてそれでもゲームは進行します。これが『Life Is Strange』の精神的に簡単ではない、つまりはつらいところです。

 『Life Is Strange』は多くの時間ループ系作品のように、大がかりな仕掛けや大胆なトリック、意外な犯人といったミステリ的な要素が売りのゲームではありません。むしろある程度この手のゲームをやってきた人にとっては、似たような展開は既に目にしているようなものと思います。20時間足らずでクリアーできる長さのため、内容的なボリュームも長さを活かした仕掛けもありません。
 しかしそうした時間ループ系作品としての面白さが不足していても、そのおかげで、『Life Is Strange』は選択肢の重さが他のアドベンチャーゲームと比べて圧倒的に重いです。

 『Life Is Strange』日本語版のキャッチコピーは「人生は選択肢だらけ でも もし 選び直すことができたら」です。選び直すことができたら。この後に続く言葉に、マックスもプレイヤーもはじめ希望を見出します。
 しかし上に書いたようなゲーム体験から、次第に、徐々に、「選び直すことができても……」と思うようになります。

 true endを用意しなかった『Life Is Strange』は最後の最後、選択肢も与えてくれません(エンディングの静かなこと!)。そしてゲームは終わり、「Life Is Strange」というゲームタイトルへとプレイヤーは戻ってきます。そしてそこから先の選択はマックスに、プレイヤーに任されていることを悟ります(今ここ)。