2016年に読んだ漫画ベスト5



 ついついツイートしてしまったため(「つい」と「ツイ」をかけているよ)今年も年間ベスト漫画エントリーを更新するはめになりました。

 ぼくの場合1つをじっくり読んで咀嚼するタイプなので、ランキング形式で紹介するブログみたいなことはうまくできないな~とようやく分かってきたのですが。今年は世の中に流されず年間総括やまとめランキングはもうやらないぞ~と決めていたのですが。世の中いろいろあるものです。

 選出に当たって例年やっている完結作品と新規作品とそれ以外を別に枠を設けて選ぶ形式の方が本来正確なのですが、個人のランキングが正確である必要は無いし、忙しくて数読めてないから5選で充分だし、何よりもう選んでしまっているのでこれで強行します。

 イカ、よろしく順不同。




 今年の漫画はさておき、今年の漫画雑誌としては”あの”週刊少年サンデーが超面白くなってきた話題に尽きる。尽きるでのはないでしょうか?
 『だがしかし』や『競女』など目を引く(いろんな意味で目を引く)漫画がアニメ化し、新人育成に力を入れるという新体制の方針は一先ずうまくいっているように感じます。
 一つの作品が安定して面白い軌道に乗るまで、継続して連載できる人気を獲得するまでをリアルタイムに見届けるのってすっごく面白くて、漫画誌を読む大きな理由になっていますが、新人のちょっと変わった新連載が次々に出てくる今年のサンデーはそういう意味で本当に楽しかったです。

 さてサンデー新体制は新人育成だけではありません。かつてのサンデーを支えたベテラン勢も新規に連載を始めました。
 中でも『天使な小生意気』という、これで主人公が黒ロンだったら言うことなしの漫画を連載していた西森博之の新作は主人公が黒ロンで第一話からスタンディングオベーションでした。


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 黒ロンお嬢様と一般人では格が違いすぎるという、正しい黒ロン観から作られた『柊様は自分を探している。』は理想的な黒ロン漫画で、これが読めるのがこの一年の水曜日、最上の喜びでした。


  • 『じけんじゃけん』



 別に『だがしかし』が始まりと言うわけではないのでしょうが、『だがしかし』のヒットからやたらハイテンションで奇妙な趣味持ちのセクシーな先輩と戯れるショートギャグ漫画を目にするようになった気がします(ex.『手品先輩』)。

 『じけんじゃけん』もその一つで、ただその先輩が黒ロン黒セーラー、題材がミステリという点を持ってこのジャンル最強に推す一作です。このジャンルあんまり広くないでしょってのは置いといて。

 先輩が九州弁というところも味を出していて良いです。たぶん方言がないと上品すぎて変な趣味と合わせが悪くなるような気がしますし、それを含めて黒ロン黒セーラーのパワフルアクティブな先輩というキャラクターを描くのがめちゃくちゃ巧いです。

 黒ロン美人な先輩がばかみたいな子どもの遊びにつきあってくれる。むしろ率先して遊びだして自分がついて行くこのジャンルはきっとノスタルジーが売りで、だから中高生の頃あほほどミステリ読んでた人ほど、そして黒ロン大好きな人ほど『じけんじゃけん』を気に入るはずです。

 このジャンルにおける『だがしかし』のすごいところとして、ただの永遠の日常ショートギャグではなく、どこか終わりの空気を感じるところが、時にドキッとさせ、普段のギャグ回の読み心地にも影響するという技巧があるので、『じけんじゃけん』もショートギャグにもう一つ加えて化けてくれるともっとうれしいなあと思っています。ミステリだからどんでん返し用意するのなんかはどうでしょう。


  • 『響 ~小説家になる方法~』



 又吉直樹芥川賞。続く村田沙耶香の受賞作も純文異例のヒット。そしてボブ・ディランノーベル文学賞と、今年は純文学の話題が次々出てくる珍しい一年でした。
 こんなときに『響 ~小説家になる方法~』も芥川賞編をやっていたというのが何ともタイミングよく、毎週が楽しみな漫画でした。

 響という少女の絶望的な才能の描き方。登場する作家や同級生のキャラ立ち。

 そして何と言っても響を中心に動き出すストーリー展開。1巻2巻あたりからミスリードが巧い漫画でしたが、今年も一つ大きなトリックを仕込んできました。見事にだまされましたが、改めて見返すと読者が意識をそちら側には向けないよう、しかし存在だけははっきり示しているというフェアなミステリで、相変わらずミスリードが抜群に巧いです。


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 『ワールドトリガー』は大規模侵攻編が終わり、しばらくは日常パートの落ち着いた話が続くのかと思いきや、まさかの大規模侵攻編後の方が面白いというものすごさ。

 大規模侵攻編は現時点で最も強い敵と戦っていたパートであり、現在のB級ランキング戦編ではそれと比べればはるかに弱い相手と戦っています。ついでにB級ランキング戦編では味方サイドのB級隊員たちのチームバトルが主となっていますが、主人公たちは大規模侵攻編の前にすでにA級隊員との戦闘も経験しています。

 以上の事柄だけでも、インフレーションが止まらない週刊少年ジャンプのバトル漫画の中で『ワールドトリガー』が特殊な位置にあることが伝わると思います。
 加えて誠偽りない平凡主人公。基本的には汎用武器での戦い。手足がよく切れる戦闘。『ワールドトリガー』の特殊な要素はまだまだあります。

 現在のB級ランキング戦編がすごく好きで、チームバトルの新鮮な面白さ。多すぎるくらい多いキャラクターを決して多彩とは言えない絵柄で描き分ける(戦闘スタイルや性格、趣味、癖等で)技術。命のやり取りはなく、目的は別にある戦闘。バトルよりはスポーツに近い感覚で、とても『Splatoon』っぽい。

 緊迫感のないのほほんとした者もいれば、好戦的な者もいて、ドラマが薄い者もいれば勝たなければならない者もいる。強いやつが勝つというシビアな現実があり、その中の創意工夫があり、そういった努力をできない者もいる。ニュートラルな描き方のキャラクター群像劇には、はまればはまるほど面白い。




 少女漫画の界隈では超有名からは一歩下がる位置にいた咲坂伊緒も、今年は『アオハライド』・『ストロボエッジ』の映画化が決まり、堂々と看板を張るポジションに到達したと思います。
 その新作『思い、思われ、ふり、ふられ』は過去作と比べても飛び抜けて巧い。

 高校生4人を中心とした恋愛ストーリーで、主役の朱里と由奈が対照的な性格でありながら仲良くなり、互いに影響を受け合います。

 朱里は恋愛経験値が高い女子で、少女漫画の主役としては珍しいタイプ。朱里サイドの話はテクニックで恋愛を考えがちな朱里が想定外の恋に落ちていく様が本当に可愛いです。

 一方、由奈は自分に自信がなく、恋愛の経験もない一般的な少女漫画の主役タイプ。アクティブな朱里に憧れて一歩踏み出す由奈サイドの話は多くの共感を得られるところと思います。

 朱里に憧れて一歩踏み出した由奈の勇気に、今度は朱里が影響を受ける。相互に影響し合う2人の友情と恋愛の行方が非常に楽しみで、高校生のきらきらとした恋愛ストーリーがくらくら目眩のするくらい美しいです。

 ずっと少女漫画の感想テンプレートである「胸がキュンキュンする」って感覚が分からなかったのですが、『思い、思われ、ふり、ふられ』を読んではじめて分かりました。恋するキャラクターと気持ちが一致して、恋愛を疑似体験するってことなんですね。朱里の恋も由奈の恋もすごく応援してて、がんばれがんばれってなるし、読んでるこっちまで胸がドキドキしてきます。