『悪役シンデレラ』 ヒーローショーの悪役は女子高生!?

 雑誌でたまたま出会ったデビュー作「退屈しのぎは華やかに」(単行本『かわいいから許す』に収録)が気に入って以来注目していた三月薫さんの作品ということで、内容全くチェックせずに読み始めた『悪役シンデレラ』。
 なんとご当地ヒーローショーのヒーロー役と女悪役の恋愛ストーリー(恋愛色薄め)という珍しい漫画でした。


かわいいから許す (デザートコミックス)

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悪役シンデレラ (デザートコミックス)

悪役シンデレラ (デザートコミックス)


 一昨年からずっと特撮作品を題材にした漫画『トクサツガガガ』を推してきて、その影響で相当久しぶりに特撮作品を観る習慣もついた自分としてはかなり興味のあるテーマ。この題材にしては珍しく悪役視点ということで、逆側から見てヒーローものへの理解が一段深くなったと感じます。


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 病弱な弟の喜ぶ顔が見たいという理由で、その弟の大好きなご当地ヒーローショーのスタッフとしてアルバイトを始めることにした女子高生・立花彩佳。裏方スタッフを希望していたものの、ちょうど演者を探していたと言う女悪役に抜擢されてしまいます。

 役が役だけに弟にもクラスメイトにも言うことができず、また夢と希望を持って演じていると信じていたヒーロー役は実は金銭第一主義者と知って、前途多難なバイトの日々。苦悩する彩佳ですが、ヒーロー役の青年・風間駿の導きで、少しずつ「大切な人の笑顔のために「悪役」としてがんばること」を学んでいきます。

 ヒーロー役の風間は21歳で女子高生の彩佳からするとけっこうな年上で人生経験も上。そのため余裕を持ってリードしてくれ、ストーリーに安定感があります。

 弟のためにがんばりたいという夢と理想を求める彩佳の危うさを、現実主義の風間がちょっと方向修正させて導いていく。金銭第一主義者の風間にも彼なりの事情があり、風間とヒーローショーの経験を積む中で、彩佳はヒーロー役と悪役という表裏一体の関係を、また風間のことを徐々に理解していきます。その過程は意地悪な風間の突き放すような説教に彩佳が傷つきながらも意味を考え、進んでいくという形で描かれており、メンタル弱め自己犠牲精神強めの彩佳に好感を抱きます。

 恋愛というよりはパートナー関係が描かれており、好きになってからの葛藤やドキドキする描写があまりなく、恋愛要素は薄めに感じます。そこも欠点には見えず、女子高生と大人の恋愛ならこれくらい男性側が察しよく余裕持ってリードしていくのがむしろ自然なんだろうなと、余裕のない大人ですがそう思います。何よりこのパートナー関係が、舞台の上でのパートナー関係が舞台から降りても続くような形で描かれているのが素敵です。


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 もともと三月薫さんは絵が好きで注目していましたが(どういう絵かの説明が思いつかなかったので試し読みで確認を)、ちょっと変わったお話にもチャレンジしていると知り、今後も作品を追っていきたい想いを強めました。